リサーチ・レポート
基本に立ち返る
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グローバル・エクイティ・オブザーバー
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2021年10月1日
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2021年10月1日
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1万ドルが年率8%で増加した場合、5年後には1万4693ドル、10年後には2万1589ドルになり、20年後には4万6610ドルと4倍以上の価値になります1― 資本の強い実質的上昇です。辛抱強く待つことができるのであれば、この複利効果は長期投資で成功するための基本となります。
複利の利率も大事ですが、重要なのは複利を継続する能力です。そのため、我々は投下資本利益率が継続的に高い企業を保有しようとしています。なぜなら、我々の経験上、こういった企業が最も優れた複利効果の特性を示すためです。
重要な点
持続可能な高いリターンを達成するために必要不可欠な要素がいくつかあります:価格決定力、参入障壁が高く模倣が困難な無形資産、そして、長期的な力強い成長機会を有する業界やカテゴリー内での高いプレゼンスです。また、資本を効果的に配分し、成長を推進し、絶え間ないディスラプティブ・チェンジ(破壊的変革)の海を航行する経営陣の能力も不可欠です ― 成長なくしてコンパウンド(複利的に増益)することは不可能です。
価格決定力が重要な理由は2つあります。第一に、価格決定力はインフレとデフレのいずれの状況においても業績に貢献します;仮に、原材料コストが上昇したとしても、最終消費者に投入コストの上昇分を転嫁することができます。そして、こうしたコモディティ起因のコストが低下しても、価格設定を維持することができます(つまり利益が増える)。第二に、価格決定力が強いと粗利益率を上手くコントロールできます(つまり、粗利益率を安定させるという意味)。高い粗利益率(市場全体が26%であるのに対し、当運用チームのグローバル株式ポートフォリオの平均は50%)は、価格決定力の強さを示します。当然のことながら、インフレやデフレを相殺することができないのであれば、高い粗利益率を維持することはできないということです。
高い粗利益率は、持続的成長の一助になります。例として、フランスの大手美容会社を挙げてみましょう。同社の粗利益率は70%、営業利益率は20%です。つまり、売上高の50%が営業経費(70%~20%)となっています。営業経費は、イノベーション、セールス、マーケティング、研究開発にあてられています。同社は世界をリードするブランドを構築、維持するために、マーケティングのみに売上の30%を費やしています。平均的な企業の粗利益率が26%であることを踏まえると、並みの企業では太刀打ちできないでしょう。平均的な企業が売上の30%をマーケティングに費やすと、間違いなく損失を出てしまいます。そのため、高い粗利益率は、高い参入障壁を支える一助となり、そして安定した利益創出を支える、という2つのメリットをもたらします。
模倣が困難な無形資産は、参入障壁が高く、耐久性に優れているため強力です。スポーツシューズからシャンプーに至るまで、概して消費者に好まれているブランドは、長年にわたってブランドを構築し、ブランドの立ち位置を調整する投資を行っています。そして、嗜好の変化に合わせて調整し、妥当性を保ち、魅力的な状態を維持し、店舗やオンラインですぐに入手できるようにしています。大手グローバル・テクノロジー・ソフトウエア企業は、仕事と家庭の中核を成す強力なプラットフォームを構築してきました。そのため、高いスイッチング・コストが他の選択肢への移行を妨げています。なぜリスクを取る必要があるのでしょうか?なぜコストをかける必要があるのでしょうか?そして、そもそも乗り換える先などあるのでしょうか?プロバイダーが効果的なものを提供し、常にイノベーションを行う限り、他のサービスに移行する必要性は皆無です。もちろん、ディスラプター(創造的破壊者)は、特にテクノロジーの分野で出現しますが、一般的には、ディスラプターは最も強力なフランチャイズ(優位性あるブランド/企業)を引き上げる一助になります。新規の電子決済会社は、大手のデビット・カード会社とクレジット・カード会社の既存のインフラを利用しています(新規のプレイヤーは、既存のインフラの恩恵を受けるのです)。ゲームやアプリ、ソーシャルメディアの開発者は、既存のデスクトップやモバイルのOSサプライヤーのためにコードを書いています。このように、新規のプレイヤーにとって既存のインフラは必要不可欠なのです。
我々は価格が適正な水準にあり、健全なファンダメンタルズに根ざした成長が見られ、長期にわたって持続的に成長可能な企業に投資します。我々は、株価にかかわらずに非常に高い成長に期待する、というリスクは取りません。もしくは、利益を上げる見通しが立っていない、または新たな方法が期待される、発見されたばかりの刺激的なビジネスにも関与しません。我々は企業が属している、または展開している業界やカテゴリーが、長期的な成長に向けて確かなロードマップを有しているかどうかを確認したいと考えています。例えば、デジタル決済、企業全体に及ぶネットワーク、美容とパーソナル・ケア、医療技術、金融とビジネス・ソフトウェア、健康衛生、環境ソリューションといった魅力的な機会は、全て当運用チームのポートフォリオに反映されており、事業が確立された世界の代表的な、優位性の高い企業によってポートフォリオは支えられています。
そして、無視できない点
コンパウンド(複利的に増益)する可能性を確保するため、運用プロセス全体を通して、ESG課題がリターンの持続性にもたらす重大なリスクと機会を検討します。例えば、気候変動の影響や脱炭素化の必要性を無視すると、企業の競争優位性や評判が一気に損なわれる可能性があります。天然由来の製品、リサイクル可能な包装、低炭素排出、あるいは製品情報を十分に開示するラベルといった消費者のニーズを満たすブランド価値を作り出せないと、フランチャイズ(優位性)を毀損する可能性があります。サイバーセキュリティリスクに対処するために適切な投資をしなければ、事業と利益に大きなダメージ(情報漏洩や不正アクセス)を受ける可能性があります。ダイバーシティ&インクルージョンの推進を怠るなど、優れた企業文化を最大限に推進しないことによって、フランチャイズにさらなるリスクがもたらされる可能性があります。我々が企業とのエンゲージメントを実施する際には、社外のスコアやデータのみを用いて意見を形成するのではなく、これらについて議論を行います。
どこに上手くいかなくなる可能性があるのでしょうか?経営陣が株主資本の配分を賢明に行われなければ、継続的に高い利益が維持されることはないでしょう。無形資産が事業のドライバーとなっているため、限られた資本しか必要としていない高収益企業は、高水準のフリー・キャッシュフローを生み出し、強力なバランスシートを有しています。この資金余力は、一歩間違えるとリスクになりかねません。要するに、不要な資産を間違った理由かつ間違った価格水準で買うことにより、多額の資金があっという間に失われてしまいます。経営陣は、オーガニック成長(買収以外による成長)の鈍化を隠したり、(インセンティブがあれば)短期的な利益成長を加速させたり、適切な資産を非常に高いコストで手に入れるかもしれません。
これらは、どのようにコントロールすればよいのでしょうか?ファンダメンタル分析とエンゲージメントを通じてコントロールします。我々は経営陣のインセンティブ構造が短期視点の行動をもたらすかどうかを把握しようとしています。可能であれば、経営陣と面談し、経営陣が資本配分についてどのように考えているか(どこで、どのように、そしてなぜ)、そして過去にどのように配分したのかについて理解し、リスクや機会について結論を得るようにしています。ポートフォリオの売買回転率が非常に低い長期保有株主であるため、このような継続的な対話が可能となります。
金融市場における日々の議論が多岐に亘っている世界(テーパリングに関する度重なる議論、非農業部門雇用者数、仮想通貨の慌ただしい値動き、景気刺激策、水素とリチウムイオンの優劣、インフレが一時的なのか持続的なのか、商業宇宙旅行、悪いニュースは良いニュースに、良いニュースは悪いニュースに)では、長期的な利益を生み出す中核である「コンパウンドする力」を見失うことは容易です。そのため、コンパウドする能力を有し、投下資本利益率が継続的に高い、希少な企業を保有することに執拗にこだわり、絶え間なくポートフォリオの中身を確認しています。
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インターナショナル・エクイティ運用チーム責任者
インターナショナル・エクイティ運用チーム
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エグゼクティブ・ディレクター
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