フラッシュ・レポート
EDGE:オートメーション/ロボティクス
 
 

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EDGE:オートメーション/ロボティクス

 

ファクトリー・オートメーション(生産現場で工程 の自動化を図るシステム)は18世紀末に英国で 糸車が機械化され、産業革命の幕が上がったとき からずっと我々の身近にありました。1960年代に 入り、初めてロボットが自動車産業に登場します。 それ以降一貫して、商業目的にロボットを利用 する最大のユーザーは自動車メーカーと部品 メーカーでした。しかしながらこの10年間、テク ノロジーの進化につれ、ロボットはより多くの 産業の幅広いニーズに応えることができるよう になってきました。

 

EDGEへようこそ。

モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジ メントのカウンターポイント・グローバル株式 運用チームは、ブロックチェーン、自動運転車、 機械学習、遺伝子編集など、広範囲に影響 を及ぼすと考えられるビッグ・アイデアに対 する独自の分析を発信しています。

カウンターポイント・グローバル株式運用 チームの長期投資の考え方としては、分野の 枠にとらわれない見通しや洞察、思考を重視 するとともに、運用プロセスにおいては持続可 能な競争優位性を有するユニークな企業の 発掘に注力しています。本レポート「EDGE」 を通じて、運用チームが変化をどのように捉え ているか、また、長期的に投資環境を著しく 変化させると考えられるパターン認識のプロ セスについて、運用チームの視点を共有して いきたいと思います。

本レポートの目的は、運用チームが以前から 取り組んできたファンダメンタル・リサーチを 補完し、知的好奇心と柔軟な思考、知見、自己 認識、およびパートナーシップに根差した 長期投資のフレームワークを打ち立てること にあります。

 

何が変化したか

歴史的に、ロボットに関わる最大の問題は、高額の費用と柔軟 性の欠如でした。柔軟性が欠けているがゆえに、ロボットは新しい 仕事は無論のこと、現在の仕事の若干の変化にも対応できません でした。ところが過去10年間にロボティクス(ロボット工学)分野 では3つの技術革新が起きました。その結果、柔軟性が向上し、 コストが低下して、対応可能な市場が拡大したのです。

 

第1は、当初スマートフォンやビデオ・ゲーム 用に開発された一連のセンサーがロボティ クスに応用できるようになったことです。これら の産業の規模は極めて大きいため、急速な技 術の進歩を目指した投資が可能であり、大量 生産を通じてコストの低下が実現しました。 このような展開は、規模の小さいロボティクス 業界では不可能なことでした。センサーの価格 は全般的に低下し、光学センサーをはじめ 一部のセンサーの価格は、100分の1程度に まで下落しました1。こうして安価なセンサー を装着したロボットはまわりの環境を認識でき るようになり、ロボットが周囲の状況に対応する 方法が根本的に変化したのです。これまで ロボットができる作業は、単純ではあるもの の毎回正確に繰り返すことが必要な反復 作業に限られていました。しかしながら今や、 センサーによって様々なことが認識できるように なったロボットは、状況に応じて自らを調整し、 ルーチンから逸脱した(例えば、部品がきちんとはまっていなかったり外れていたりする) 事態に対しても適応できるようになりました。

第2は統合に関わるものです。統合とは、 ロボットに望む作業をさせるためにプログラ ミングを行い、必要な装備を搭載するプロセス を意味します。以前は、このプロセスには実際 のロボットの2 ~3倍の費用がかかるうえ、 完了するまでに数ヵ月を要しました2。その高額なセットアップ・コストが障害となり、ロボット の使用は生産規模が大きく、長い製品サイク ルを持ち、大量販売を通じて同コストを償却 できる製品の製造にのみ限定されていまし た。しかしながらソフトウェアの改善に伴い、 今日ではこうした図式が変わりつつあります。 最新のロボット用ソフトウェアでは、ロボットに 所与の作業を行わせるのに必要なプログ ラミングが大幅に単純化されています。以前はエンジニアやコンピューターの専門家がロ ボットのプログラミングを行うのに1カ月かか る場合もありましたが、最新のソフトウェアを 使えば、さほど高度なスキルを身につけてい ない従業員でも、1日か2日でロボットのプロ グラミングができます。加えて、ソフトウェアと センサーの働きにより、ロボットは近くに人間 がいることを感知し、動作を調整して人々の 安全を確保できるようになっています。その 結果、統合プロセスにおいて必要な安全 装置(ケージなど)が少なくて済むようにな りました。

 

過去10年間にロボティクス(ロボット工学) 分野で起きた技術革新の結果、ロボットの 柔軟性が向上し、コストが低下して、対応 可能な市場が拡大しました⸺新世代の ロボットの登場です

 

第3に、グリッパー(物をつまんだり掴んだりす るための手の役割を果たす装置)の性能向 上と価格下落を受けて、ロボットが実行でき るアプリケーションが増えました。3Dプリント の登場とグリッパー用部品の標準化により、少 量生産のコストが低下したのです。センサー の機能が向上し、目標物を適切に操作する ために必要な力をフィードバックできるように なったことも相まって、新世代のグリッパーは 以前のものと比べて格段に器用になり、幅広 い作業をこなせるようになっています。

ロボットはなぜ革新的な技術なのか

以上の3つの変化を背景にロボットの設置コス トが低下したため、これまで均一化した大量 生産型製品の製造のみに限定されていた ロボットの市場が、格段に拡大しました。こう した展開が、より広範な市場に向けた、新たな カテゴリーのロボットの登場を可能にしたの です。例えば、10年前には存在しなかった 協働ロボット(「コボット」)が、今やロボティク ス市場の中で最も急速な成長を遂げており、 2017 年の成長率は70%超に達しました3。 コボットはケージの中で人々と切り離されて 作業を行うのではなく、人々と交わって作業 するように設計されています。コボットには重 いものを持ち上げられないという制約がある 反面、価格の低下と設置の容易さを追い風 に、急速に普及が進みつつあります。顧客の大半は、以前はロボットを設置する余裕の なかった中規模企業です。

コボットに加えて、工場から病院まで至る所 で搬送用に使用することが可能な自律型移 動ロボットの生産も始まっています。こういっ た新世代のロボットは、構築するのに多大な コストがかかるうえに既存のプロセスに適応 させるのが困難な外部環境に依存するので はなく、センサー技術と地図を使用して、自ら の誘導で動作を行うことができます。

医療分野では、ロボティクス・システムに基 づくロボット支援手術が急成長を見せていま す。ロボットを使用することにより、数か所を 小さく切開するだけで手術を行うことができる ようになりました。この10年間に、かかるシ ステムを使用したロボット支援手術は6倍以 上に増加しました4。ロボットによる正確かつ 的確なコントロールが手術結果の改善をもた らしていることが、このような趨勢の背景に あります。ソフトウェアとセンサー、グリッパー の向上が、この正確で的確なコントロールを 可能にしました。これらのロボティクス・システ ムにより、執刀医は術野(手術部位の視野) を立体画像として捉えながら、手術を進める ことができます。また執刀医によるコントロー ラーの操作は、適切なスケールに調整されて ロボット・アームに伝えられます。注目すべき は、” Endo Wrist”と呼ばれるアームの先端 に取り付けられたグリッパーは、人間の手首 よりも広範なレンジの動きが可能なことです。 このことにより、伝統的な手法では不可能 だった手術ができるようになりました。

ロボティクスが伝統的な製造業を超えて一段 と拡大するなか、いち早くこの技術を採用 したのが物流業界です。2017年現在、「高度 に自動化」されていると言える倉庫及び配送 センター(DC)はわずか5%にすぎませんで した5。伝統的なDCでは、倉庫従業員は 1日に12~15マイルの距離を歩き、施設内 にある棚から商品を選び出し、包装して顧客 へ発送します。労働力利用の観点からこう した作業は非効率的なだけでなく、物流企業 は一般に、倉庫従業員の高い離職率に悩ま されています。身体的な負担が大きく、孤独 な作業を強いられることがその理由です。

2012年に、米国の最大手オンライン小売企業 が自律運搬ロボットを使った物流センター自 動化ソリューションの業界大手企業を7億 7500万ドルで買収しました。この買収によっ て入手したシステムのお陰で、今やDC内 の商品はすべて「可動式ロボット」である棚 に収納されます。そして従業員が棚に収納 されている商品を取りに行く代わりに、これら の可動式ロボットによって、商品が従業員の もとに運ばれてきます。このシステムには幾つ かの利点があります。商品が注文されてから 発送されるまでに必要な時間の短縮化、従業 員の仕事への満足度向上、DCに必要な床 面積の減少などです。当該オンライン小売 企業の推定によれば、自動化による以上のよ うな恩恵により、DCの運営コストは約20% 減少したとのことです5

長期的に見ると、上記の一連の技術(グリッ パー、センサー、ソフトウェアの改善)により 選別や仕分けなどの新しい分野にも適用 範囲が広がれば、アクセス可能な市場は一段 と広がって行くでしょう。現時点では、ロボッ トは大きさや形状、色を正確に識別すること ができません。識別能力が改善すれば、 かかる課題は解決するとも思われます。物を 掴む能力が改善すれば、ロボットはごみ収集 といった作業にも取り組めるようになり、物流 をはじめとする分野での役割が一段と拡大 すると期待されます。

労働生産性を押し上げることにより、ロボティ クスは様々な産業にわたり労働コストの引下 げを可能にしますが、とりわけ大きな効果が 見込めるのが製造業です。労働コストがさほ ど大きな懸念でなくなれば、工場の立地を 選択する場合に優先する要因が変化します。20世紀末から21世紀初頭には、安価な人件 費の恩恵を享受すべく、多くの工場がアジアに 立地していました。今日では、ロボティクスの 発展に伴い、企業は人件費以外の要因に基 づいて工場の立地を決定することが可能にな りました。例えばユーザーの近くに工場を建て れば、納品までにかかる時間が短縮化され、 市場のトレンドに合わせて設計を素早く変更 することができます。さらに輸送コストが軽減 され、在庫にかかる運転資金も減少します。 また、製造施設をエンジニアの近くに建てれ ば、イノベーション能力が改善され、知的財産 権のより高度なコントロールにも寄与します。そ のほか、企業は規制環境が良好な地域や税金 の安い地域に工場を建設することも可能です。

課題

ロボティクスの採用拡大にとって最大の脅威 の1つは、規制強化です。とりわけ懸念されるのは、ロボットが雇用削減につながりかね ないことです。近年、「ロボット税」を導入しよう という動きが出ています。推進派は、ロボット 税の導入により、自動化の進展が社会に及 ぼすネガティブな影響―失業、税収減少 など―が相殺されると主張しています。とは いえ、自動化の水準は産業革命以降、ほぼ 一貫して上昇を続けてきました。そして人々は このような変化に適応することができました。 1900年には、米国の人口の38%が農業に 従事していました6。現在、農業に従事する 人口は2%未満にまで減少しましたが、全体の 失業率は依然として4%を下回っています7

結論

ロボットが登場したのは1960年代に遡りま すが、今、ロボットは急速な進化を遂げつつ あります。これらの進化の結果、ロボット 市場は従来の自動車産業にとどまらず家電や物流業界、そしてサービスの分野に まで広がりを見せています。ロボティクスの 発展により自動化される産業は、今後も増え 続けるものと予想されます。我々はこうし た変化を注視し、ロボティクスが投資機会 に及ぼす長期的な影響を見極めていきたい と考えます。

 
 
 
 
 
長期的な観点からの投資を実践するために、徹底した個別銘柄のファンダメンタル分析を通じて、見通しや洞察を重視したボトムアップの銘柄選択を行うことで長期での元本の上昇を追求
 
 
 

1 Lesser, A. (2015年1月25日)。 Declining Sensor Costs Open up New Consumer Applications(センサー・コストの低下が開く新たな消費者向けアプリケーション)。https://gigaom.com/2015/01/25/declining-sensor-costs-open-up-new-consumer-applications/

2 Bélanger-Barrette, M. (2016年2月3日)。 What is an Average Price for a Collaborative Robot?( 協働ロボットの平均価格はどのくらいか?)https://blog.robotiq.com/what-is-the-price-of-collaborative-robots

3 Berglund, S. (2017年3月7日)。 Cobot Market Boom Lifts Universal Robots􏘧 Fortunes in 2016(2016年にはコボット市場のブームがロボット市場全体の成長に寄与)。https://www.roboticsbusinessreview.com/manufacturing/cobot-market-boom-lifts-universal-robots-fortunes-2016/

4 Schwitzer, G. (2018年8月28日)。 New Questions About the $3B/Year Robotic Surgery Business(年商30億ドル市場に成長したロボット手術ビジネスについての新たな疑問)。https://www.healthnewsreview.org/2018/08/new-questions-about-the-3b-year-robotic-surgery-business/

5 McCrea, B. (2017年3月31日)。 Automation Study: The State of Automation(自動化研究:自動化の現状)。https://www.mmh.com/article/automation_study_the_state_of_automation

6 Historical Timeline – Farmers & the Land(年表:農家と土地)( 2014年)。https://www.agclassroom.org/gan/timeline/farmers_land.htm

7 米労働統計局、Percent of Employment in Agriculture in the United States(米国における農業従事者の比率)、セントルイス連銀経済統計データ;  https://fred.stlouisfed.org/series/USAPEMANA, October 18, 2018

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本書は、カウンターポイント・グローバル株式運用チームが作成したレポート をモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳した ものです。本書と原文(英語版)の内容に相違がある場合には原文が優先し ます。本書はカウンターポイント・グローバル株式運用チームの運用に関する 情報提供を目的として作成したものであり、法令に基づく開示資料ではありま せん。本書は信頼できると判断した情報を元に、十分な注意を払い作成して おりますが、その正確性や完全性をお約束するものではありません。本書の内容 は作成時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。本書中の グラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証 するものではありません。また、特定の銘柄及び市場等全般の推奨や価格の 上昇又は下落を示唆するものではありません。当社の事前の許可無く、本書 を第三者へ交付することはご遠慮下さい。