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2023年インベストメント・アウトルック
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2022年12月30日

実物不動産:優良物件の強固なファンダメンタルズが資本市場の低迷を相殺する展開

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2023年インベストメント・アウトルック

実物不動産:優良物件の強固なファンダメンタルズが資本市場の低迷を相殺する展開

実物不動産:優良物件の強固なファンダメンタルズが資本市場の低迷を相殺する展開

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2022年12月30日

 
要旨
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株式市場や債券市場への資金還流が始まったとしても、現在の優良物件の強固なファンダメンタルズが資本市場の低迷を相殺する展開は、当面続くと思われます。

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今後は、より評価が下げられる可能性が高いダイナミックで高レバレッジな市場や、物件のエネルギー効率を最適化するためのESG対応改修、上場市場とプライベート市場の間の裁定取引、流動性を必要とするファンドによる割安な投資機会に絡む裁定取引などの投資機会が見込まれます。

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また、現在の低迷する市場環境下、物件の投げ売りや換金売りが出てくる可能性や、上場市場とプライベート市場間のM&A活動の活発化が期待されます。

 
 

市場の状況

  • 不動産セクター、中でも優良物件のファンダメンタルズは総じて堅調で、資本市場の低迷を相殺する展開が続いています。不動産プロジェクトでの新規建築が停滞していることは、中期的にはファンダメンタルズの強化につながっています。一方、マクロ環境が悪化する中、エンベディッド(現行賃料が市場実勢を下回っているためリース更新時に実現すると高い確度で見込まれる)賃料収入の伸びは、物件評価価格の下支えになると考えられます。歴史的な低水準の空室率やEコマースの普及、高い賃貸志向などの長期的なトレンドに支えられ、物流用施設や賃貸用住宅のファンダメンタルズは好調です。
  • また投資家は、学生用住宅や高齢者用住宅、ヘルスケアや個人向け倉庫などのニッチで需要が景気循環に左右されないセクターへの投資配分を増やしています。ホテル・セクターの回復については、レジャー向けでは加速していますが、ビジネス向けは出遅れています。オフィスについては、(在宅と出社の)ハイブリッドな勤務形態や入居者の選別眼が厳しくなったことにより、全体的な需要は低迷しています。また、商業用施設については引き続きインフレによる実質個人所得の減少という逆風にさらされています。
  • ESGは不動産投資家、入居者、従業員のすべてにとって重要性を増してきており、賃料や物件価値を最適化するために不可欠な要素となっています。
  • 不動産取引市場では、資金調達力の低下と負債コストの上昇、および市場の先行き不安の高まりにより停滞しています。その一方、日本は例外で、資金調達コストは記録的な低水準にとどまっています。不動産市場への資金流入は分母効果の影響で減速しており、投資家のポートフォリオのリバランスに伴って資金が株式や債券に戻りつつあります。
     

投資行動・今後の方針

  • 市場のボラティリティの上昇や流動性の低下は、資金力のある投資家にとって、強固なファンダメンタルズを持つ人気セクターの優良物件を低価格で取得できるという、より有利な環境を提供しています。
  • よりダイナミックでレバレッジが高く、負債コストの上昇による評価価格の調整が最も早いと予想される市場(米国、英国、オーストラリア、韓国)を主な投資ターゲットとする一方、日本では引き続き既存の取引関係を活用し、魅力的な水準で物件の取得を目指します。さらに、メザニンや優先株ポジションを通じたギャップ・ファイナンス投資など、クレジットへの投資機会も有望であるとみています。
  • また、上場市場とプライベート市場の間での裁定取引、および流動性を必要とするファンドのもたらす割安な投資機会に絡む裁定取引を好機と捉えています。コロナ禍後の入居者のニーズを満たす、最高品質物件を取得することを目指しつつ、これまで培ってきた、アセット・マネジメントの経験・知識を活用し、インカムの強化を図ります。さらに、不動産のエネルギー効率を最適化するためのESGの観点による改築も投資のターゲットとしています。
     

今後の注目点

  • 経済や雇用、インフレ、金利のシグナルが、どのように市場循環の転換点を示してくるのかを注視しています。また、現在の低迷する市場環境下、物件の投げ売りや換金売りが出てくる可能性にも目を光らせています。
  • 今後は、上場市場とプライベート市場の間でのM&A が活発化すると予想されます。
  • また、世界的な政治状況の変化により、家賃規制や不動産税などの規制リスクが高まる可能性があります。その意味で、世界的な混乱や景気回復サイクルの違い、地域・市場別のビジネスチャンスに注目しています。米国と中国の地政学的な緊張と世界の成長およびサプライチェーンの問題は、引き続き株式市場全体への重石となっており、それがプライベート不動産市場にどのような影響を与えるかを注視していきます。
 
 
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経済や雇用、インフレ、金利のシグナルが、どのように市場循環の転換点を示してくるのかを注視しています。また、現在の低迷する市場環境下、物件の投げ売りや換金売りが出てくる可能性にも目を光らせています。
 
 
 
 
グローバルの不動産を対象に、コア型およびオポチュニスティック型戦略を提供。20年以上の投資経験を有する、世界屈指のアクティブな不動産投資家のひとつ
 
 
 

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