リサーチ・レポート
シュリンクフレーション
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グローバル・エクイティ・オブザーバー
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2022年9月2日
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2022年9月2日
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シュリンクフレーション |
経済学者のピッパ・マルムグレンが「シュリンクフレーション」という用語を生み出しました。最も一般的な用法は、企業が製品の価格を維持したままサイズを小さくすることを意味します。また、あまり一般的ではありませんが、マクロ経済において経済が縮小する一方で物価が上昇する状況を指すこともあり、いわゆるスタグフレーションとしても知られています。
金利上昇とインフレを背景に、生活費の上昇とは対照的に市場は縮小しています。3月の米国消費者物価指数のデータでは、年間インフレ率が8.5%となり、1981年12月以来の高水準となりました。
少なくとも先進国では、政府の大規模な支援とワクチンが予想以上に早く開発されたことにより、経済がコロナ危機から急速に回復したため、商品や原料が不足し、これまでのところインフレは「モノ」が要因となって引き起こされています。この状況は、ロシアのウクライナ侵攻による食糧とエネルギーの供給不足によって悪化し、コロナによるロックダウンが中国の生産に影響を与えれば、さらに悪化する可能性があります。
1ロールあたりのシート数、1瓶あたりの錠剤数、1箱あたりの洗剤量を減らすようなシュリンクフレーションは、インフレに対する企業の対応としてますます一般的になってきています。つまり、材料費、人件費、エネルギー価格、包装費、輸送費の上昇を乗り越えて利益を維持または増加させるため、あるいは利益を求めて競争が激化する中で市場シェアを維持するために、各ブランドは価格を下げずに製品のサイズ(もしくは内容量など)を縮小しています。サービス業も例外ではありません。ホテルチェーンでは、毎日の客室清掃を顧客の選択制にしたり、パンデミック後の朝食サービスの再開を急がないようにしたりしています。顧客は通常、内容物よりも価格に敏感であり、ブランド名を変更したり、袋を小さく変更したりしたような「改良型」製品は、それほど否定的に受け取られることはなく、またほとんど気づかれることもありません。しかし、企業は消費者の反発に注意する必要があり、製品を何度も縮小するわけにはいかず、場合によっては消費者の信頼を失うリスクもあります。実際、ソーシャルメディアが普及し、誠実さが重視される世界では、2022年にシュリンクフレーションを行う企業は、縮小した製品について(なぜ縮小したか)説明する必要が出てくる可能性が高くなるでしょう。
これまでのところ、企業の予想EPSはこうした懸念とは無縁であることが証明されています。MSCIワールド・インデックスの12か月先予想EPSは、今年に入ってから5%上昇しています (6月末現在)2。これは、利益率が低下する前に、インフレによる売上上昇を(今のところは)企業が享受しているためです。 実際、営業利益率3は極めて高い水準にあり、MSCIワールド・ インデックスでは17%に近づいています。これは、パンデミック前のピークである15%、20年間の平均である13.4%と比べても高い水準です2。このような高水準にある利益率は、インフレそのもの、あるいはインフレに対処するための試みによる経済減速によって、脅威にさらされることになるでしょう。投資家としてこのような環境を乗り切るための鍵は、堅牢なファンダメンタル、つまり価格決定力(原料や人件費などの投入コストを消費者に転嫁する能力)を有する企業に注目することです。
私たちは今年の年初では、EPSとPERの両方について非常に懸念を抱いていました。6月末時点では、PERは2003年から2019年の平均に近く、恐ろしい水準ではなくなりました。一方で利益に関する懸念は上昇し続けており、その一因は、インフレや景気後退を受けて、高水準にある利益率の低下リスクが高まっていることです。このような利益に対するリスクを考えると、コンパウンダー企業、つまり価格決定力と継続的な売上によって厳しい状況下でも利益を確保できる企業を保有する時期としては、現在は絶好の機会と言えるでしょう。
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マネージング・ディレクター
インターナショナル・エクイティ運用チーム
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