フラッシュ・レポート
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2019年8月1日
デジタル時代の「堀(強み)」を再構築する
 

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デジタル時代の「堀(強み)」を再構築する

デジタル時代の「堀(強み)」を再構築する

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2019年8月1日

 
 

過去50年間にわたり大手生活必需品企業はアナログの世界で繁栄してきました。これは圧倒的な市場シェア、売上成長の加速、高い投下資本利益率の維持に歴然と現れています。しかし、デジタル時代はこうした繁栄に対して二つの課題を提示しています。一つはE コマース(EC)、そしてもう一つはソーシャルメディア/検索を含む新たなマーケティング・プラットフォームです。

 
 

公正を期すために言えば、生活必需品業界ではデジタル時代への適応に手間取っています。成長率は1桁台半ばから1桁台前半に鈍化し、「大手ブランドの終焉」が取り沙汰されています。しかし、大手生活必需品企業がデジタル時代を乗り切る秘訣を見いだし始めている兆候が散見されます。すなわち、こうした一流ブランド企業は規模とスキルを兼ね備えることで繁栄し、売上成長が再び持ち直しているのです。

まず中国のEコマースを取り上げてみましょう。中国の国内Eコマース企業は技術と革新の面で最先端を走っており、おそらく世界最高と言えるデジタル・ブランド構築プラットフォームを備えたオンライン・エコシステムを提供しています。世界の他の国々とは異なり、中国国内のブランド企業はロイヤルティ・プログラム(ポイントサービス)やライブストリーミングなどのサービスを売りにした独自の仮想店舗を所有しています。こうした仮想店舗はプラットフォーム・プロバイダーによってセグメント化されており、例えば(アリババが運営するラグジュアリーECサイト)「ラグジュアリー・パビリオン(Luxury Pavilion)」は、高級美容ブランドに特化しています。これにより、これらの高級ブランドが大衆市場向け商品によって締め出されたり、洗剤の隣に並べられたりすることが避けられます。プラットフォーム・プロバイダーは消費者の購買パターンに関するデータをブランド企業と共有しており、これが製品イノベーションを後押ししています。プラットフォームは1~2級都市から4~5級都市へとブランドの浸透を急激に拡大し、6億人に上る潜在的な消費者を取り込んでいます1

欧米企業を含め中国で事業展開する大手生活必需品企業はデジタル投資の成果を得ており、それは中国での売上高の急増に歴然と示されています。例えば、我々がポートフォリオに組み入れているフランスの大手美容企業では、アジア太平洋地域の前年比増収率が2017年の11%から2018年には26%に上昇しました。ちなみに2015年と2016年には前年比増収率が5%弱にとどまっていました1

中国以外に目を向けると、米国のあの有名なECサイトはデジタル小売業の分野で圧倒的なシェアを握っていますが、消費者に関するデータをブランド企業と共有せず、ブランド構築よりも価格に重点を置き、自社ラベルを活用してブランド企業に対する直接的な競合者となっている点で中国の同業他社と好対照を成しています。このため、この米国企業はブランド破壊に躍起になっているというのがもっぱらの見方ですが、実際にはこの企業の自社ブランドの大半は、プラットフォーム上で効率的な競争方法を習得した大手生活必需品企業との競争に敗れているのです。これらの生活必需品企業は自社が確実にキーワード検索の上位に表示されるようにして(米国では製品検索全体の55%がこのプラットフォーム上で直接行われるため、これは重要な点です2)、自社製品が顧客ランキングとレビューの上位に来るよう取り組んでいます。これらの企業にとっては、米国で複数のEコマース運営企業が存在することもプラス材料となっています。従来型の小売企業は自社ECサイトでの製品提供に多額の資金を投じてきました。2018年のEC売上高は従来型小売のトップ企業で40%増、ディスカウント小売のトップ企業で36%増でした3。このようなデジタル化がもたらす幅広い機会に支えられ、大手生活必需品企業は世界全体および米国のEC売上高を同期間中に40%程度伸ばすことができました4。これは米国の有力ECプラットフォームと業界の伸び率を大きく上回る数値です。

 
 
 
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米国ではデジタル化がもたらす機会を追い風に、大手生活必需品企業の2018年EC売上高は約40%増加。
 
 

今日、大手生活必需品企業では売上高全体に占めるEコマースの比率が5年前の1~2%から5~10%に上昇しています4。生活必需品企業にとって重要な点として、Eコマースの営業利益率は実店舗での販売と同等な水準にあり、EC小売企業は小規模ブランドよりも大規模ブランドの販売からより大きな利益を得ています。

デジタル・マーケティングの分野に目を向けると、シリコンバレーの主要広告プラットフォーム(外見上は検索エンジン/ソーシャルメディア・サイト)は実質的に生活必需品企業に対する税金の機能を果たしてきました。過去5年間に生活必需品企業の経営陣は投資収益率の向上を期待して、マーケティング費用の30%から50%を伝統的なメディアからデジタル・マーケティングに振り向けましたが4、売上高の伸びは鈍化する結果に終わっています。

 
 
 
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デジタル・マーケティングの効果を発揮させたければ、変革と人材確保が必要。
 
 

こうした中で、生活必需品企業はマーケティング部門を再教育・変革する必要性にようやく気づいた模様です。それは単にデジタル・マーケティングに資金を投じればよいという単純なものではありません。従来であれば、企業は世界的な広告キャンペーンに向けたクリエイティブなコンテンツの策定、ならびに新広告を打ち出す最善のタイミングなどキャンペーンの戦術的な執行の、1年前の時点で広告代理店に概要を説明していたでしょう。しかし今日では、生活必需品企業のマーケティング・チームは「インフルエンサー」の間で流行っている直近のトレンドを把握する“ソーシャル・リスニング・チーム”を擁しています。ソーシャルメディアのサイト向けコンテンツを絶え間なく生み出すため、社内でクリエイティブ・チームを編成しているのです。専門家チームはデータを発掘し、デジタル費用効率をリアルタイムで監視しています。例えば、デオドラント化粧品の広告キャンペーンでは、スポーツをする20歳~30歳の男性をターゲットとする方が、20歳~30歳の男性喫煙者をターゲットとするよりもヒット率が高いかどうか、といったことを監視します。大手生活必需品企業が基本事項(例えば、クリーンなデータ、適切なキーワードの購入、自社ウェブサイトへのアップロード時間の短縮)を習得して、質の高いデジタルコンテンツの作成(例えば、興味を引く広告が表示されるまでの時間を6秒から2秒に短縮)へと、ノウハウを蓄積するのに伴い、現在のデジタルマーケティング・プラットフォームにおける「税金」は縮小していくと考えられます。

では投資家として、我々は優れた成果を上げている企業をどのように特定しているのでしょうか?我々は(新たな進展について)学び直す必要もありました。過去数年間に多くの生活必需品企業が売上高に占める広告・販促費の比率を低下させ、デジタル投資収益率の向上を追求してきました。しかし、ただで手に入るものなどありません。デジタル・マーケティングの効果を発揮させたければ変革と再教育が必要です。つまり、デジタルの専門家を何百人、何千人も雇用する必要があるということです。この投資費用は損益勘定の「広告・販促費」の項目ではなく、「販売費及び一般管理費(販管費)」の項目に計上されます。組織改革とデジタルの専門家の雇用が実行に移されると、デジタル専門家はデジタルコンテンツ向けの投資拡大を求めるため、広告・販促費は再び増加しますが、取り組みが成功すれば売上の伸びは再び加速し、売上高に占める販管費は低下します。

我々のポートフォリオに組み入れている世界的な美容ブランド企業は、こうしたデジタル革命の最前線に立っており、他の生活必需品企業の立ち位置を示す有益な指標になると考えられます。コンサルティングを手掛けるガートナーL2社は、専門知識に基づきデジタル分野全体にわたり1,872のブランドをランク付けしています。2018年にはこのうちの57ブランドが最高水準を意味する「Genius」という肩書を取得しました。ここで取り上げた世界的な美容ブランド企業は最多の「Genius」ブランド(7ブランド)を保有しているだけでなく、過去10年で最高の7%という増収率(美容市場全体のほぼ1.5倍に相当)を達成しています5

 
 
 
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デジタル時代を乗り切る秘訣を見いだした生活必需品企業は「堀(強み)」を強化し、売上成長を加速させ、高い投下資本利益率を維持することが可能。
 
 

デジタル時代を乗り切る秘訣を見いだした生活必需品企業は、今後何年にもわたり自社の「堀(強み)」を強化し、売上成長を引き続き加速させ、高い投下資本利益率を維持することができます。新たなデジタル環境の中で大手ブランド企業は規模とスキルを兼ね備えることで繁栄することができます。我々は投資家として企業の属性を評価する際には、投資効率、分散化、起業家精神に加えて、デジタルの専門知識を判断材料にしたいと考えています。

 
william.lock
 
インターナショナル・エクイティ運用チーム責任者
 
bruno.paulson
 
マネージング・ディレクター
 
dirk.hoffmannbecking
 
エグゼクティブ・ディレクター
 
 

1出所:企業のアニュアルレポート

2 出所:L2コンサルティング、2019年

3 出所:企業の2018年アニュアルレポート

4 出所:各企業のアニュアルレポート

5 出所:企業の2018年アニュアルレポート

 本書は、インターナショナル・エクイティ運用チームが作成したレポートを、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳したものです。本書と原文(英語版)の内容に相違がある場合には、原文が優先します。

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25億円までの部分に対して          0.864%(税抜 0.800%)
25億円超50億円までの部分に対して             0.810%(税抜 0.750%)
50億円超100億円までの部分に対して           0.756%(税抜 0.700%)
100億円を超える部分に対して     0.702%(税抜 0.650%)
※ 表記の料率は年率表示です
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※ 税込料率は法律に定められる税率が適用されます
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最低受託金額
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《ご注意》
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投資一任契約に基づいて投資信託に投資する場合の費用
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投資顧問料率
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•   組入れ予定の弊社設定投資信託から弊社が受領する運用報酬はございません。したがって、投資顧問報酬額は上記の年率0.75%(税抜)で計算されます。
•   表記の料率は年率表示です。
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投資信託にかかる費用
信託報酬                        年率0.054%(税抜 年率0.05%)内、委託者報酬(運用報酬) ありません
信託財産留保(相当)額    基準価額に0.20%を乗じた額(解約時)

•   販売手数料はございません
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- 組入有価証券を売買する際に生じる取引費用
- 外貨建資産の保管費用
- 信託事務の処理に要する諸費用
- 受託会社の立替えた立替金の利息
- 投資信託財産に関する租税
- 投資信託財産に係る監査報酬
- 法律顧問に対する報酬
- 投資信託約款および受益者に対する報告書の作成、印刷および交付に係る費用
- 公告および投資信託約款の変更および解約に関する書面の作成、印刷および交付に係る費用
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(上記その他の費用については、当該投資信託の運用状況等により変動するため、事前に料率やその上限額等を表示することができません)

上記投資顧問報酬(0.75%)と上記投資信託の信託報酬(0.05%)の合計は、0.80%(年率、税抜)となります。