市場の状況

• 今後のプライベート・エクイティのリターンにおける最大の牽引役は利益成長になる可能性が高く、アルファを創出するためにはマネージャー選択が引き続き重要です、収益性を高めるためのオペレーションの改善や、シナジー効果をもたらすことができる戦略の専門家が必要とされます。
• レバレッジの寄与度は、投資資本倍率（MOIC）で見た投資リターンの約4分の1を占め、マルチプル拡大に対して僅かに下回る水準となりました。
• 借入れコストが上昇し、IPOやストラテジック・バイヤー（戦略的買収者）の需要が低迷していることが、マルチプル拡大の足枷となっています。
• 金融引き締めや財政縮小、供給サイドの混乱が世界の需要を縮小させています。景気減速に加え、インフレ率と金利の上昇により、世界の株式市場は弱気相場の局面に突入しています。金利上昇は、レバレッジの縮小とマルチプル拡大の低下をもたらしており、これらのリターン要因からのパフォーマンス寄与が抑制される可能性があります。
  

投資行動・今後の方針

• 過去20年間とは異なり、金利上昇の環境下では、マルチプル拡大がリターンの牽引役になることが期待できないため、取引のエントリー時におけるバリュー獲得に注力しています。
• バイ・アンド・ビルド戦略は事業規模の拡大とシナジー効果の創出につながるため、より強固な利益成長をもたらし、オペレーションの効率性を最大化するうえで重要な役割を果たします。この投資手法は再現性が高いため、多くの場合、実質的には、見た目のバリュエーション・マルチプルより割安なアドオン買収を実施することが可能です。
• 私たちは、プライベート・エクイティは市場の混乱を乗り越え、投資妙味があるエントリー価格で投資できると引き続き考えています。プライベート・エクイティは、数あるプライベート市場の資産クラスの中で最も成長性が高く、Preqinによると、2025年までにオルタナティブ投資資産全体の約70%近くを占めるようになると予想されています。¹過去10年間で素晴らしいパフォーマンスを達成してきたプライベート・エクイティへの投資を、私たちはさらに積み上げていきたいと考えています。
• 収益性を高めるためのオペレーションの改善と、アルファ創出のための最適なシナジー効果を獲得できる戦略に注目しています。
   

今後の注目点

• ジェネラル・パートナー（GP）は、業界最高水準のオペレーションを実践し、バイ・アンド・ビルドなどの戦略を通じてシナジー創出や規模の拡大を実現する必要があります。
  資金調達のペースは落ちるかもしれませんが、ドライパウダーは3.6兆ドルと記録的な水準にあり、取引量は高い水準を維持するものと思われます。優良資産の獲得競争が続く中、魅力的なバリューでエントリーできる案件のオリジネーションは容易ではなく、GPは価値を創出するために案件を厳選し規律を維持する必要があります。
• マルチプルの縮小と負債コストの上昇により、価値創出の源泉としての利益成長の重要性がさらに髙まっています。投資家は長期的な投資目標を達成するために、オルタナティブ投資への資産配分を引き続き増加させています。
• ミドルマーケット企業の創業者、とりわけ初めてフィナンシャル・インベスター（金融機関系投資家）の支援を受けようとする創業者とパートナーを組み、経営の脆弱性を軽減していくことで、景気後退の逆風に対する企業の感応度を低減できる可能性があると考えています。

¹ 「The Future of Alternatives 2025」 Preqin（2020年8月）