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グローバル・エクイティ・オブザーバー
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2023年3月31日

PERは大幅に低下 - 次はEPSか?

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2023年3月31日

PERは大幅に低下 - 次はEPSか?


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PERは大幅に低下 - 次はEPSか?

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2023年3月31日

 
 

2022年のスタート時点で、株式市場に対する私たちの懸念は二つしか存在しませんでした。しかし、いずれも重要な意義を有するもので、その二つとは株価収益率(PER)と一株当たり利益(EPS)でした。2022年にMSCIワールド・インデックスの予想EPSは4%増と、かなり妥当な水準で底堅さを示していました。この指数が18%下落した要因の全ては、上場市場で起きたPERの急低下で、MSCIワールドの予想PERは19.3倍から15.0倍まで低下しています。これは時価評価の落ち込みが見られず、投資家を保護した非公開市場とは対照的です。

 
 

このPER低下は、特により割高な「グロースの特徴が強めな」企業に集中して起きており、コミュニケーション・サービス、一般消費財・サービス、情報技術の全てが30%を超える下落を記録しています。EPSの耐久性(レジリエンス)と予想PERの偏った低下の組み合わせにより、2022年は非常に稀な一年となりました。通年で株価が下落した2008年、2011年、2015年、2018年は「クオリティ」が保護的機能を果たしましたが、2022年はこれが起きず、MSCIワールド・クオリティ・インデックスが22%下落し、より広範なMSCIワールド・インデックスを400ベーシス・ポイント(bps)下回る展開となりました。

 
 
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史上最も想定された景気後退(リセッション)との見込みにもかかわらず、予想EPSが相対的に健全な様相を呈しているのは驚くべきことです。
 
 
 

2023年の年初時点で12ヵ月前に私たちが抱いていた二つの懸念は、一つがほぼ解消され、残る一つだけとなりました。MSCIワールド・インデックスのPERが15倍に低下し、現在は2003~2019年の平均値をわずか5%しか上回っておらず、これは市場がもはや明確に割高ではないことを示唆しています(2022年初頭には36%上回っていた)。とはいえ、当然ながら景気が大幅に悪化すれば、PERが平均値を下回る可能性があります。依然として最大の懸念となっているのはEPSです。インフレは少なくとも名目上の売上高の伸びを下支えするとみられますが、MSCIワールド・インデックスの営業利益率16.3%は、コロナ以前のピークを100bps、2003~2019年の平均値を300bps上回っており、非常に高い水準にあります。これは、クオリティ面で劣るあらゆる種類の企業に価格決定力を与えてきた、過剰需要の世界と整合性がとれています。この時期の企業のEPS問題は、系統的な需要問題に起因したというよりも、会社特有であったと考えられます。その多くは、サプライチェーンの混乱などコロナの直接的な影響によるものか、または新型コロナの発生から恩恵を享受した、かつての「コロナ・ヒーロー」たちがパンデミック後に業績不振となった事で、これらの企業はパンデミック後の世界に適応することが必要になります。

様々なフォーラムで、「史上最も想定された景気後退(リセッション)」と表現されているにもかかわらず、ボトムアップによる予想EPSは相対的に健全な様相を呈しているのは驚くべきことです。2023年のMSCIワールドの予想EPSは、米ドル高といった逆風に直面しても、2022年の数値を3%上回り、コロナ以前の2019年の数値を36%上回ると推定されています。米国を中心とする中央銀行は、需要の鈍化を図ることでインフレに対処すべく、積極的に利上げを実施しています。具体的にどの程度の水準にまで引き上げる必要があるのかといった点や、モノのインフレの鈍化と継続する賃金上昇のバランスを比較・評価する議論が存在します。これに加え、米国のインフレを計算する上で、住宅関連の要素の遅効性に関する難解な議論があります。偉大な経済学者が対立する中で、私たちはこれらの複雑さについて見解を述べる立場にはありません。

しかし、ソフトランディング(経済の軟着陸)に成功した場合でさえも、基本的な事実であるのは、西側の大半の国で成長がほぼ停止した状態になるというのが2023年の経済見通しのコンセンサスである、という事です。中央銀行による行動の影響は、金利に敏感な分野、特に住宅分野ですでに感じられており、また、消費者はインフレに起因する不快なほどの実質所得の圧迫に直面しています。しかし、雇用市場は逼迫した状態が続いており、米国の失業率は依然として3.5%に低下したままで、賃金、そして中央銀行の行動にも上方圧力がかかります。先行指数は低下しましたが、経済面における大部分の痛み、すなわちEPSに対する痛みはまだ発生していません。

2021年と2022年の超過需要が2023年には超過供給に移行するため、利益率が現在のピークから低下し、EPSのリセッションが起きる可能性が高まっています。再び、厳しい時期にどの企業が耐久性(レジリエンス)のあるEPSを達成しているかを、市場は再び目の当たりにすると考えられます。これまでと同様に、私たちのポートフォリオに組み入れる重要な基準である価格決定力と経常収益は、2008~2009年の金融危機やパンデミック初期の2020年上半期のように、改めてその価値を示すことになると思われます。コンパウンダーは、複利的増益が継続するとみられます。2022年の痛みを伴うPER低下の後の明るい兆しは、全ての複利的増益が低PERで発生するということです。株式で資金を失ってしまうには二つの方法しかありません。EPSの低下か、PERの低下のいずれかとなります。このような不確実性が高まった時代においては、耐久性(レジリエンス)のあるEPSと適度なPERで取引される銘柄で構成されたポートフォリオを保有することが賢明な手法であると考えられます。

 
bruno.paulson
マネージング・ディレクター
インターナショナル・エクイティ運用チーム
 
 
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定義

スコープ1の排出量は、企業自身による直接的な排出量(例:石炭/ガス発電所、セメント窯、鉄鋼炉、自社トラック)。

スコープ2は、企業が購入する電力に含まれる排出量。これは、a)工場や生産現場がどの程度のエネルギーを消費するか、b)電力供給会社のエネルギー構成(再生可能エネルギーか化石燃料か)によって決まる。これは現在、多くの国で選択の問題になっている。

スコープ3は、間接排出(企業が管理できないもの)で、サプライチェーンに起因するもの(川上)、そして消費者が製品を使用する際に生ずるもの(川下)。

本書は、インターナショナル・エクイティ運用チームが作成したレポートを、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳したものです。本書と原文(英語版)の内容に相違がある場合には、原文が優先します。

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