フラッシュ・レポート
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2019年2月12日
バリュエーションは低下するも、リスクは低下せず
 

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バリュエーションは低下するも、リスクは低下せず

バリュエーションは低下するも、リスクは低下せず

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2019年2月12日

 
 

株式投資の損失について朗報と言えるのは、これが生じる要因が減益となるかバリュエーションが低下するかの二通りしかないということです。1年前にはバリュエーションが最大の懸念材料でした。2017年の強気相場の後、MSCIワールド・インデックスの12カ月先予想利益ベースPER(株価収益率)は17倍を上回り1、世界経済の成長が同時に上振れするという、可能性の低いシナリオを市場が織り込んでいたことを示唆するとともに、予想通りに利益が達成されなかった場合には株式市場がかなり下振れする、という兆候が表れていました。対照的に、2019年初頭のMSCIワールド・インデックスの予想PERは13.4倍で、20年平均の15.5倍を14%、1年前の予想PERを20%下回っています2。このため、我々の主な懸念はバリュエーションから利益に移っています。

 
 
 
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我々の主な懸念は バリュエーションから 利益に移行
 
 

我々は利益予想に対して全体として懐疑的な見方を変えていません。利益予想は見せかけの利益に基づいた憶測であると考えています。憶測と呼ぶのは、セルサイドが一貫して過度に楽観的であるからであり、彼らの向こう1年間の予想増益率は平均8%で、MSCIワールド・インデックスの2019年の予想増益率7%を若干上回っています3。見せかけの利益と呼ぶのは、市場コンセンサスの数値(および経営陣の報酬)を裏付けるために使用される「調整後」利益と損益計算書の実際のIFRS/GAAPベース4の利益に大きな乖離があるからです。過去3年間の調整後利益と実際の利益の差は米国のみで6,000億ドルに達し、前者が後者を年平均21%上回っています5。我々は押し上げられた利益により市場が割安に見えているにすぎないという事実を特に懸念します。予想PERではなく予想企業価値(EV)/EBITDA倍率6を見てみると、現在は9.2 倍で過去平均を上回っており、更にPERが17.6倍7と高水準にあった2003年における9.0倍を、若干上回っています。足元では法人減税が増益に寄与してPERが抑えられていますが、負債が増えてEVが増加しているためで、これについては後で詳しく説明します。EV/売上高倍率を見てみると、MSCIワールド・インデックスは1.8倍で、過去20年平均を依然として16%上回っています8。EV/売上高の割高性とPERの割安性は、現在の非常に高い利益率を反映していますが、これは特に米企業で顕著であり、高利益率、低税率、高レバレッジ(つまり低金利)などの要因がすべて重なり、利益に大きくプラスに作用しているように見られます。

2019年の予想増益率が達成されるのか、これを上回るのかに関して特に優れた見識があるわけではありませんが、注視すべき主要なテーマに関して常に確固たる意見をもっています。足元の中国の経済成長の減速は利益に対するリスク要因であり、特に景気敏感企業に対する影響は大きいでしょう。また、ある程度リフレ政策が実施され成功することが不可欠です。リフレ政策が実施され、成功したとしても、効果が表れていない年前半には、利益が伸び悩む可能性があります。前述の通り、米企業の利益率は非常に高く、高利益率を支える仕組みが確立されている一方で、高収益プラットフォーム企業の出現、および米国の政治システムが過去40年間にわたり労働者と消費者よりも資本を優遇する構造であったことを踏まえると、価格決定力がない企業は、労働力不足および関税の影響により、利益が圧迫される可能性があります。

全面的な貿易戦争、米連邦政府機関閉鎖の深刻化、中東の紛争、ユーロの崩壊などのテールリスク以外で、利益を間違いなく圧迫するのは、米国の大幅な景気減速または欧州のさらなる景気減速でしょう。米国では非常に長期にわたり景気回復が続き、回復が終焉を迎えていない一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策変更が非常に大きな懸念材料となる可能性があります。就任から1年を経過していないものの、パウエル議長は株式市場の足元の水準や、自国通貨が米ドルの影響を受けやすい米国外(新興国市場)の人々の行く末よりも、実体経済の状況を重視していると思われます。したがってパウエル議長は米国経済の軟化を認識するまで、利上げと量的緩和縮小により、金融引き締めを継続する可能性が考えられます。軟化が見られた時点で引き締めを停止するでしょうが、それでは市場にとってタイミングが遅すぎる可能性があります。

2018年には4つの主要中央銀行のバランスシート(FRB、中国人民銀行、欧州中央銀行、日銀の合計)の規模がついに、世界金融危機後に大幅に拡大した後、縮小に転じました。これは、現在、世界において流動性が圧迫され、中央銀行(各行で違いがあるものの)がバランスシート縮小と利上げを行っていることを意味します。2009年の景気の底以来、資産価格が押し上げられ、その結果レバレッジが高まったのとは真逆と言えるでしょう。

 
図表 1 中央銀行のバランスシートと MSCIワールド・インデックスのトータル・リターン
 
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出所:モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント、ファクトセット/ MSCI


 
 

我々は、減益の可能性と流動性の逼迫が資産価格の下落要因に なることを懸念しています。前述の通り2019年に利益予想が達成 されるかは不透明ですが、明確なのは“世界が非対称”という事で、 つまり好景気の増益余地よりも不況時の減益余地のほうが大きいと 考えています。非対称はレバレッジにより増幅され、特に米企業の レバレッジはかつてなく高まっている事も、忘れられがちです。米企業 は全体として適切なタイミングでレバレッジを高めることができず、 世界金融危機の直前に最も顕著でした(つまり危機直前にレバ レッジを高めていた)。足元の企業の債務水準、特にハイイールド債 およびハイイールド債ぎりぎりの社債(または、利回りがそれほど高く ないことから、我々が好んで呼ぶところのジャンク債またはジャンク債 ぎりぎりの社債)が占める割合を踏まえると、米企業は利益を維持 しなければならないと言えるでしょう。

 
図表 2 米社債市場の内訳
 
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出所:モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント、ファクトセット/ ICE BofAMLインデックス


 
 

我々はジャンク債ぎりぎりの社債(BBBなど)の見通しに特に懸念 を抱いています。ジャンク債ぎりぎりの社債は社債増加の中心部分 を占めており、2008年10月の7,000 億ドルから現在の3兆ドルに 大幅に増加しています9。さらに、ジャンク債ぎりぎりの社債(BBB) と実際のジャンク債(BB、B、CCCおよび以下)が米社債市場全体 に占める比率は2008 年10月の46%から58%に上昇しており10、 社債市場全体のクオリティが低下しているのは明らかです。米企業 が大幅に減益となれば、BBBからジャンク債への格下げが大量に 発生する可能性があります。現在は安定しているように見られる ハイイールド債市場は、こうした予想を織り込んでいないと考えて います。もし大量の格下げが発生し、特に減益と過度な債務という 共通する原因を有する場合には、債券市場の大きな問題が必ず 株式市場に波及することを、株式市場が思い知らされるのは間違い ありません。

 
 
 
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反復的売上と価格決定力により、 景気後退局面でも売上と利益率を 維持し、利益を確保
 
 

この不透明で非常に非対称な世界において、我々は複利のように 利益を増幅できるコンパウンダー銘柄を評価し続けます。コンパウ ンダーは、反復的売上と価格決定力により、売上と利益率を維持し、 景気後退局面でも利益を確保することができると想定されます。 また、社債市場の流動性が逼迫しても、営業レバレッジと財務レバ レッジが低い(つまり固定費用と負債が少ない)ことから、財務的に 困難な状況に陥る可能性は低いでしょう。2018 年第4 四半期に 市場が低迷したことから、我々のポートフォリオのバリュエーション は若干低下し、2019年の予想フリーキャッシュフロー利回りは現在 5%を上回り、絶対ベースで下振れするリスクが低下しています11

 
 

1 出所:ファクトセット、2018年12月31日現在

2 出所:ファクトセット、2018年12月31日現在

3 出所:ファクトセット、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント、 2018年12月31日現在

4 IFRS = 国際財務報告基準、GAAP = 一般に認められた会計原則

5 出所:ファクトセット、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント、2018年12月31日現在

6 EBITDA = 利払前・税引前・償却前利益

7 出所:ファクトセット、2018年12月31日現在

8 出所:ファクトセット、2018年12月31日現在

9 出所:ファクトセット、2018年12月31日現在

10 出所:ファクトセット、2018年12月31日現在

11 出所:モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント、2018年12月31日現在

 本書は、インターナショナル・エクイティ運用チームが作成したレポートを、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳したものです。本書と原文(英語版)の内容に相違がある場合には、原文が優先します。

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