フラッシュ・レポート
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2019年7月4日
未知の領域を進む
 

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2019年7月4日

 
 

過去数年間の混乱を考えると、英国の政治について予想するにはおそらく危険が伴うでしょう。しかし、英国と欧州連合(EU)間の交渉が妥協に至る余地は無くなりそうです。欧州議会選挙では、ブレグジットの議論において二つの「極端な主張を掲げる政党」が躍進しました。ナイジェル・ファラージが党首のブレグジット党を中心とした「合意なき離脱派」の得票率は35%、自由民主党が率いる「残留派」は40%に達しました。妥協策を模索する英国二大政党の得票率は合計25%を下回り(労働党が14%、保守党が9%)、わずか二年前の総選挙時の82%から急落しました。

 
 

保守党党首選の結果を予想するのは非常に困難ですが、新党首、すなわち次期首相は「合意なき離脱」を主張するか、少なくとも10月31日以降の離脱延長を排除するでしょう。EUでは今後数力月間に次期委員会が選出されることを考えると、離脱延長の排除は実質的に「合意なき離脱」を意味します。現在、英国議会の過半数が合意なき離脱に反対していることを踏まえると、議会がこの結果を阻止できるかどうかが焦点となります。英国にとっては憲法上、未知の領域に足を踏み入れることになるでしょう。最終的には、総選挙、国民投票またはリスボン条約50条の発動取り消しを通じて、英国が合意なき離脱か残留決定かの二者択一を迫られる可能性が高まっていますが、これは全く予想できません。

 
 
 
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英国にとっては最適な状況からほど遠いものの、我々のグローバル・ポートフォリオに対する影響は比較的軽微と考えられます。
 
 

「恐怖キャンペーン」(離脱による恐怖を訴える残留派のキャンペーン)への参加で非難されることを望むものではありませんが、合意なき離脱は、英国に大きな経済的打撃を与えるだけではなく、欧州大陸にもおそらく動揺を与えるでしょう。どの程度の打撃になるかは、「合意なき離脱」が「ある種の合意」に置き換えられるなどの調整にどの程度時間を要するかに左右されます。また、英ポンドはおそらく急落するでしょう。それは英国にとっては最適な状況からほど遠いものの、グローバル・ポートフォリオに対する影響は比較的軽微と考えられます。当戦略のポートフォリオの19~22%が英国に上場しており、エクスポージャーは高くなっていますが、これら英国上場企業はグローバルに事業を展開しており、実際のエクスポージャーはかなり低く、英国の売上高はポートフォリオ全体のわずか3~4%にとどまります。したがって、2016年の国民投票後と同様に、英ポンド安による外貨建てパフォーマンスの悪化は英国上場企業の株価上昇によりおそらく相殺されるでしょう。英国を拠点とする、或る多国籍たばこ企業の場合、英ポンド安が好材料となる可能性があります。債務負担(英ポンド建てが40%を占める)および配当(英ポンド建てが100%)が実質的に軽減され、債務が削減され、ある種の「合意なき離脱に対するヘッジ」として作用します。英国にコストが集中するグラクソ・スミスクラインにとっても、大幅な英ポンド安は有利に働きます。

さらには、「合意なき離脱」の結果が全般的に「リスクオフ」イベントと受け止められるのかが注目されます。2016年の国民投票の直後とは異なり、恐怖が伝播する、またはドミノ効果が生じる可能性は低いでしょう。英国の過去3年の経験を受けて、欧州の英国以外の国では、明らかに脱EU熱が低下しました。しかし、英国および欧州大陸の経済成長に影響を及ぼす懸念は払拭されません。当運用戦略のポートフォリオが投資している企業は、反復的に売上を生み、価格決定力が高いため、売上と利益率が維持されて景気後退局面でも業績が堅調で、市場において実証される可能性が高いことを過去の事例が示しています。

 
米国企業の税引き後利益がGDPに占める割合
 
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出所:米商務省経済分析局(BEA)、MSIM Analysis、2018年12月31日現在

 
 

我々は、ブレグジットまたは合意なき離脱がポートフォリオに及ぼす影響について比較的楽観的ですが、政治リスク全般に関して警戒を緩めていません。ブレグジットに至る過程は、世界的に政治環境が変化し、企業寄りの政策から遠ざかる兆候と見られます。結局のところ、良くも悪くも、大企業から支持される政策とは決して言えません。過去数十年間にわたり政府は労働者よりも資本を優遇してきたと言えるでしょう。グローバリゼーション、職場規制、課税、合併に対する姿勢などが挙げられます。これは企業利益に表れています。企業利益が国内総生産(GDP)に占める比率は非常に高水準にあり、米国で顕著です。第二次世界大戦後には平均で約6%であったのが、現在は約10%まで上昇しています。

現在、企業利益は高水準にありますが、右派ポピュリズム、左派ポピュリズム、環境保護運動の三つの勢力が幅広く重なり合い、政治的脅威となっています。景気悪化または景気後退による循環的な脅威とは対照的に、これら三勢力が現在の高水準の企業利益にとって構造的な主要課題となっています。

 
 
 
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現在、企業利益は高水準にありますが、右派ポピュリズム、左派ポピュリズム、環境保護運動の三勢力が政治的脅威となっています。
 
 

右派ポピュリズムはすでに攻撃を開始しています。ブレグジットは一例で、自由貿易とグローバリゼーションにとって脅威となっています。トランプ大統領はグローバリゼーションの反動を体現化していると見られがちですが、こうした動きはもっと幅広いものです。世界貿易機関(WTO)によると、トランプ大統領就任前の2008~2016年に世界で1,300件の保護貿易措置が講じられ、以降活発化しています。価格決定力がなく、顧客に追加コストを転嫁できない中、米国の関税措置によりすでに企業利益は減少しており、こうした不透明感の高い状況は事業投資にとって理想的とは言えません。グローバルなテクノロジーのバリューチェーンが米国中心と中国中心に分断されれば、その影響は高率の関税よりもおそらく一段と深刻になるでしょう。また、世界的に移民に対する制限が強化されており、労働市場が逼迫し、スキルを有する人材が不足している国の企業にとって採用がさらに困難となっています。

世界金融危機以降、右派ポピュリズムが左派ポピュリズムよりもはるかに成功を収めている点に注目すべきです。中道左派は大部分の西欧諸国でかなり苦戦しているのが現実で、得票率は急低下し、フランスでは10%を下回っています。このような失敗の経験から左派において政策は一段と過激なものとなり、2020年米国大統領選の民主党候補の多くで顕著です。こうした政策には、最低賃金の引き上げ、労働者の権利の拡大、市場の集中化に対抗する独占禁止政策の復活など、労働市場の改革が含まれます。英国の左派では、現在の株主に全て補償することなしに、一部の産業を再国有化することが検討されています。さらには、異端の現代金融理論が広く議論されています。同理論は、貨幣の増刷により政府支出を大幅に拡大することを提唱していますが、株式のバリュエーションの裏付けとなる低インフレを脅かす可能性があります。これらの政策が導入されるかどうか不確かですが、景気悪化により導入されるリスクが高まる可能性があります。

三番目の勢力は環境保護に対する圧力に関連しています。世界の気温の上昇を産業革命前比2℃未満に抑えるために、2016年のパリ協定を実行に移す過程で、炭素集約度の高い産業が大きな影響を受けるというのが科学的なコンセンサスとなっています。環境保護政党が最近の欧州議会選挙で10%近くの議席を獲得し、勢いを増しているのには注目すべきです。選挙での躍進がいつ企業行動を制約する政策に反映されるのかは不確かです。

足元の市場のバリュエーションから、これらのリスクが株式市場において十分に織り込まれているとは考えられません。MSCIワールド・インデックスの12カ月先予想PERは15倍近くにあり、景気循環に関する懸念を考慮しないとしても、これらの企業利益を圧迫する構造的脅威の多くが織り込まれていないように見受けられます。ポートフォリオ・レベルでは、これらの脅威によりESG分析における環境と社会の要素の重要性が増しています。まずは個別銘柄または業種レベルで検討される必要がありますが、一般的な指針をいくつか挙げます。

 
 
 
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現在、企業利益は高水準にありますが、右派ポピュリズム、左派ポピュリズム、環境保護運動の三勢力が政治的脅威となっています。
 
 

最も重要なのは価格決定力を有しているかどうかです。これは当戦略のポートフォリオのコンパウンダーに共通する主な特徴であり、関税、人件費増、エネルギー価格の上昇などにより、企業のコストベースが打撃を受ける可能性がある場合には特に重要となります。投入コストを顧客に転嫁できるかどうかは、利益率および収益性を維持する上で不可欠です。その他にも、グローバリゼーションが脅威にさらされ、炭素集約度の高いプロセスへの依存を避ける必要がある場合には、サプライチェーンが比較的短く、簡単な構造であることが利点となります。より広い視点で見ると、政府と消費者による企業の監視が大幅に強化されている環境では、経営陣は事業が直面する環境・社会リスクを認識し、事前に対処する必要があります。こうした新たな政治環境では、安心している余地がないことは明らかです。しかしながら、ESGを十分に統合した運用プロセスを通じて、我々はコンパウンダーに重点的に投資しています。価格決定力が高い、炭素排出量が少ない、経営のクオリティが高い等の背景で、投資先企業はこれらのリスクに対処できる比較的有利な態勢にあります。

 
william.lock
 
インターナショナル・エクイティ運用チーム責任者
 
bruno.paulson
 
マネージング・ディレクター
 
dirk.hoffmannbecking
 
エグゼクティブ・ディレクター
 
 

本書は、インターナショナル・エクイティ運用チームが作成したレポートを、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳したものです。本書と原文(英語版)の内容に相違がある場合には、原文が優先します。

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費用について
投資一任契約に基づいて直接投資をする場合の費用
投資顧問料率
25億円までの部分に対して          0.864%(税抜 0.800%)
25億円超50億円までの部分に対して             0.810%(税抜 0.750%)
50億円超100億円までの部分に対して           0.756%(税抜 0.700%)
100億円を超える部分に対して     0.702%(税抜 0.650%)
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※ 税込料率は法律に定められる税率が適用されます
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最低受託金額
効率的な運用を実現するという観点から、個別口座の最低受託金額を50億円と設定しております。
《ご注意》
上記に記載している費用項目につきましては、一般的な投資一任契約を想定しております。受託資産の運用に係るリスクや費用については、投資一任契約を締結する際に、事前に契約締結前書面をご覧ください。
投資一任契約に基づいて投資信託に投資する場合の費用
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•   組入れ予定の弊社設定投資信託から弊社が受領する運用報酬はございません。したがって、投資顧問報酬額は上記の年率0.75%(税抜)で計算されます。
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投資信託にかかる費用
信託報酬                        年率0.054%(税抜 年率0.05%)内、委託者報酬(運用報酬) ありません
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(上記その他の費用については、当該投資信託の運用状況等により変動するため、事前に料率やその上限額等を表示することができません)

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