Insight Article Desktop Banner
 
 
グローバル・エクイティ・オブザーバー
  •  
2021年6月29日

クオリティは今(相対的に)割安か?

Insight Article Mobile Banner

グローバル・エクイティ・オブザーバー

クオリティは今(相対的に)割安か?

クオリティは今(相対的に)割安か?

Share Icon

2021年6月29日

 
 

直近の12ヶ月間はクオリティ投資家、特にバリュエーションに注意を払っている投資家にとっては、少なくとも相対的には非常に厳しい12ヶ月間でした。妥当なバリュエーション水準にあったコンパウンダー企業の利益は、景気サイクルを通して市場全体を大きく上回って複利のように増幅し続けていたにも関わらず、「バリュー相場」と「グロース相場(バブル)」のダブルパンチによって、市場全体に対し、パフォーマンス面ではかなり出遅れる結果となりました。いまだ、短期的な方向性は定かではありませんが、少なくとも、この「バリュー相場」と「グロース相場(バブル)」の傾向は縮小の兆しが確認できています。

 
 

2020年3月に市場が底を打った後、バリュー株が好調に推移したことは驚きではありませんでした。多くのポジティブな経済に関するニュースがあったためです。政府による大規模な介入(景気刺激策や一時解雇された労働者への失業手当など、または、中央銀行による介入が市場を支え、企業が財務的に困窮する可能性を最小現に抑えたこと)によって、コロナ危機が経済に与える影響が緩和され、企業収益への影響も限定的なものになりました。また、ワクチン開発のスピードや、場合によってはワクチン接種のスピードも、極めてポジティブなサプライズとなりました。これら全てを考慮すると、「リスクオフ」から「リスクオン」に切り替わったことは理解できますし、シクリカルなセクターの業績予想が急激に改善したことも正当化されたように思われます。こうした要因を踏まえると、収益の振れ幅が小さく、営業レバレッジが低い(つまり固定費が少ない)、安全な投資先とみなされる高クオリティ企業は、当然ながら影を潜めてしまいます。2021年3月末までの12ヶ月間で、生活必需品セクターの株価パフォーマンス+24%、ヘルスケアセクター+29%に対して、MSCIワールド・インデックス全体は+54%となりました1。これら2つのセクターの2020年1-3月における大幅な貯金(相対的なアウトパフォーム)は、その後、消滅したことになります。

加えて、リフレと金利上昇が議論されており、それは金融セクターに直接的なプラスの影響をもたらし、そして理論上では、金利感応度が高い高クオリティ株や高グロース株よりも、金利感応度が低い割安株のほうを魅力的にします。米国10年債利回りは昨年100bp以上上昇して1.74%となりましたが2、この影響はあまり明確ではありません。ドイツ10年債利回りは前年比わずか16bpの上昇にとどまり2、依然として-0.29%と低迷している事だけでは無く、グロース株の高揚感からすると、金利感応度に関する議論は整合性がとれていません。2021年3月に公表した「株式投資で損失を避けるためには(英題:Avoiding Losing Money in Equities)」では、MSCIワールドの情報技術セクターにおける最も割高な企業グループ(情報技術セクターを割高な順に5つのグループに分類)のPERは160倍(株式報酬費用を除いた2年後予想利益で計算)で取引され、そのグループの2020年の株価パフォーマンスは160%上昇となり、私たちが投資している第3位/第4位グループに位置している、動きが鈍く、割安な銘柄群のパフォーマンスを大幅に上回っていることを取り上げました。

2020~2021年は、ポートフォリオ運用の過去25年間において、4回目の大幅な(10%を超える)相対ドローダウンとなりました。過去のその他3局面は、1998~1999年のテクノロジー・メディア・通信(TMT)のグロース株相場(バブル)、2002~2003年の景気循環的(シクリカル)な業績回復を伴う株価上昇、2012~2013年の欧州危機後のリスクオン相場でした。昨年は、これら3つの要素全てがそれぞれの役割を同時に果たし、嵐のような相場になったと言えるでしょう。

高クオリティ企業の株価パフォーマンスは、過去12カ月では出遅れているかもしれませんが、私たちが重要と考える、コンパウンドすること、すなわち「複利のように利益を増幅」させる効果が発揮されなくなったわけではありません。

振り返ってみると、生活必需品やヘルスケアといった、高クオリティでディフェンシブなセクターの比重が非常に高いポートフォリオは、情報技術セクターに見られるグロース株の上昇メリットを享受することはできず、相対的にパフォーマンスが出遅れることは明確です。しかし将来のことを考えると、全く明確ではありません。野球選手であり哲学者でもあるヨギ・ベラが、「予測をするのは難しい。未来についてはなおさらだ。」と言う一方で、ウィリアム・ゴールドマンの「誰も何も知らない」という言葉が私たちは好きです。何が言いたいかというと、もしあなたがまだウィリアム・ゴールドマン脚本の名作映画「プリンセス・ブライド」を観たことがないとしたら、その作品を嫌いであることは「あり得ない」ということです。

映画の推奨と同レベルの確実性ではないものの、高クオリティ企業の収益見通しについて、私たちは確信を持っています。これらの企業はつまるところ、コンパウンダー(複利のように利益を増幅させられる企業)であり、厳しい時期においてもレジリエンス(回復力)を発揮し、景気サイクルを通じて、高い投下資本利益率を維持しながら成長を遂げることができてきた企業です。確かに、現在は通常よりも高いレベルのノイズが発生しています。飲料や医療機器は、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)が緩和されることで、バーへの来店や病院での通常業務が可能となり、恩恵を受けることになる一方で、衛生関連商品やCOVID-19検査によるポートフォリオの「ボーナス」のような収益の一部は鈍化するでしょう。また、既に英国では実施され、米国でも実施される可能性がある法人税率の引き上げが逆風となるかもしれません。しかし、このような短期的なノイズの下でも、継続的な収益と価格決定力という構造的な要因は依然として存在しています。

これまでと同様、市場の収益に対する明確な見通しはあまりありません。今後どのように市場が進展していくかは、回復の程度と期間によって決まります。企業による業績予想の発表遅延などもあるため、今後も成長期待余地はあるかもしれませんが、エネルギーや素材などのコモディティ企業以外では回復のペースが鈍化しているようです。他の9セクターの利益は、昨年6月以降では毎月2%以上の伸びを示していたのに対し、3月は0.5%の伸びにとどまっています。潜在的な増税による影響を除けば、価格決定力が限られる企業が、コモディティや労働力などの投入コストの増加をどれだけ効果的に消費者に転嫁できるか、という点が一つの懸念となっています。

市場にとって、より大きなリスクは株価収益率(PER)です。MSCIワールド・インデックスの予想利益に基づくPERは依然として20倍を上回っており、過去9カ月間にPERを計算する予想利益(EPS=分母)が27%上昇したにもかかわらず、PERはわずか1%の低下にとどまっています。これは、収益が景気サイクルの底から回復するにつれて、PERが低下するという通常のパターンに反しています。現在の市場バリュエーションは、2005年から2018年までの平均PERを6ポイントも上回っており、ここからさらなる急激な利益成長を示唆しているように見えます。もうひとつの懸念は、非常に強気なマクロ経済の見通しです。ウォール街では米国の国内総生産(GDP)成長率が年末までに8%に達し3、連邦準備制度理事会(FRB)の政策転換は早くても2023年までないと言われています。この予測は正しいかもしれませんが、さらなるマクロ経済のサプライズ(あるいは少なくともさらなるポジティブなマクロ経済のサプライズ)の余地は限られています。また、回復の強さとスピードは持続性が限定されると想定され、景気循環の初期段階(バリュー株にとって非常に有利な段階)が終わりに近づいていることを示唆しているかもしれません。

2020年の熱狂を考慮すると、市場におけるグロース株の極端なPERが特に懸念されます。特別買収目的会社(SPAC)は依然として市場に溢れかえっており、2021年の1-3月期には2020年全体を上回る880億ドルを調達しています4。しかし、この膨張した領域からは空気が抜け始めている兆しがあり、情報技術セクターの最も割高なグループ(情報技術セクターを割高な順に5つのグループに分類)の3月の株価パフォーマンスが-9%だったのに対し、他の第2位~第5位グループは平均で3.6%上昇しています。もちろん2020年におけるもっとも割高なグループの株価パフォーマンスが+160%であったのに比べれば僅かな上昇ではありますが。最大規模のSPAC50社を対象としたCNBC SPAC50インデックスは2月下旬には年初来で20%上昇した後、現在ではマイナスとなっています。

高クオリティ企業で構成されたポートフォリオが実際に利益を複利のように増やし続けることができるのであれば、前世紀の終わりに起きたTMTバブル以来の高PERで推移している市場よりも、中長期的には優れた投資になると考えています。短期的には、市場の動きは宝くじのようなものですが、グロース株バブルがピークに達し、バリュー株相場が少なくとも終わりに近づいていると考える理由があります。

 
 

1 出所:ファクトセットおよびモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント(当レポートに記載されている全ての収益および評価に関するデータ)

2 出所:Bloomberg L.P.

3 出所:Goldman Sachs 2021年10-12月期対2020年10-12月期

4 出所:SPAC Research


 
bruno.paulson
マネージング・ディレクター
インターナショナル・エクイティ運用チーム
 
 
関連レポート
 
関連レポート
 
 

 


 本書は、インターナショナル・エクイティ運用チームが作成したレポートを、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳したものです。本書と原文(英語版)の内容に相違がある場合には、原文が優先します。

本書はグローバル・フランチャイズ運用戦略に関する情報提供を目的として作成したものであり、法令に基づく開示書類ではありません。本書は信頼できると判断した情報を元に、十分な注意を払い作成しておりますが、その正確性や完全性をお約束するものではありません。本書の内容は作成時点のものであり、将来予告なく変更されることもあります。本書中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定の銘柄及び市場等全般の推奨や価格の上昇又は下落を示唆するものではありません。

当社の事前の許可無く、本書を第三者へ交付することはご遠慮下さい。

重要事項
本書は、当社の投資一任契約および投資顧問契約に関する業務に関連して提供されるものであり、特定の金融商品の取引や申込みの推奨や勧誘を目的とするものではありません。また、弊社は、本投資戦略によって運用されている金融商品の取引や申込みの推奨や勧誘を行うものではありません。

1. 投資一任契約の概要
投資一任契約は、お客様の資産の運用に関し、お客様があらかじめ運用の基本方針を定めた上で、有価証券の価値等の分析に基づく投資判断のすべてを当社に一任し、当社がこれをお引き受けするものです。お客様は投資を行うのに必要な権限を当社に委任し、当社は委任された権限を行使するにあたっては、当社の投資判断に基づきこれを行い、お客様は個別の指示を行わないものとします。

2. 元本損失が生ずることとなるおそれ
受託資産の運用には、受託資産に組入れられた株式その他の有価証券等の価格変動リスク、株式その他の有価証券等の発行体の信用リスク及び株式その他有価証券等を売却あるいは取得する際に市場に十分な需要や供給がないため、十分な流動性の下で取引を行えない、または取引が不可能となる流動性リスク等による影響を受けます。また、外貨建て資産に投資するため為替変動リスクの影響を受けます。受託資産の運用による損益はすべてお客様に帰属し、元本が保証されているものではなく、元本損失が生ずることとなるおそれがあります。

3. 投資一任契約締結に際しての留意事項
受託資産の運用は、個別の受託資産ごとに投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なりますので、投資一任契約を締結する際には、契約締結前交付書面をよくご覧ください。

リスクについて
当運用戦略は主に海外の有価証券等を投資対象とするため、当該有価証券の価格の下落により投資元本を割り込むことがあります。また、外貨建ての資産は為替変動による影響も受けます。従って、お客様の投資元本は保証されているものではなく、運用の結果生じた利益及び損失はお客様に帰属します。投資する可能性のある金融商品等には、価格変動リスク、信用リスク、流動性リスク、為替変動リスク、デリバティブ取引に伴うリスク、カントリーリスク等のリスクを伴います。

費用について
投資一任契約に基づいて直接投資をする場合の費用
投資顧問料率
25億円までの部分に対して          0.864%(税抜 0.800%)
25億円超50億円までの部分に対して             0.810%(税抜 0.750%)
50億円超100億円までの部分に対して           0.756%(税抜 0.700%)
100億円を超える部分に対して     0.702%(税抜 0.650%)
※ 表記の料率は年率表示です
※ 上記以外に投資一任契約に基づいて投資信託に投資する場合の報酬体系は上記と異なる場合があります
※ 契約資産の性質・運用方法等により、お客様と協議の上、最低受託額、受託額及び投資顧問料率を別途取り決めることがあります
※ 税込料率は法律に定められる税率が適用されます
また、投資一任契約に基づく組入資産の売買手数料、保管費用等をお客様にご負担いただきます。(当該手数料等につきましては、運用状況等により変動するため、事前に料率やその上限額等を表示することができません。)

最低受託金額
効率的な運用を実現するという観点から、個別口座の最低受託金額を50億円と設定しております。
《ご注意》
上記に記載している費用項目につきましては、一般的な投資一任契約を想定しております。受託資産の運用に係るリスクや費用については、投資一任契約を締結する際に、事前に契約締結前書面をご覧ください。

投資一任契約に基づいて投資信託に投資する場合の費用
組入れ予定の投資信託は、弊社がお客様と締結する投資一任契約に基づいて投資を行うための専用ファンドであり、当該目的での利用に限定しております。

投資顧問料率
一律0.81%(税抜0.75%)
組入れる投資信託で弊社が運用報酬を受領する場合、上記料率から控除して投資顧問報酬額を算出します。

•   組入れ予定の弊社設定投資信託から弊社が受領する運用報酬はございません。したがって、投資顧問報酬額は上記の年率0.75%(税抜)で計算されます。
•   表記の料率は年率表示です。
•   契約資産の性質・運用手法等により、お客様と協議の上、別途報酬額を取り決める場合があります。
•   税込料率は法律に定められる税率が適用されます。

投資信託にかかる費用
信託報酬                        年率0.054%(税抜 年率0.05%)
内、委託者報酬(運用報酬) ありません
信託財産留保(相当)額    基準価額に0.20%を乗じた額(解約時)

•   販売手数料はございません
•   当該投資信託に関する以下のその他の費用を、投資信託財産で間接的にご負担いただきます

- 組入有価証券を売買する際に生じる取引費用
- 外貨建資産の保管費用
- 信託事務の処理に要する諸費用
- 受託会社の立替えた立替金の利息
- 投資信託財産に関する租税
- 投資信託財産に係る監査報酬
- 法律顧問に対する報酬
- 投資信託約款および受益者に対する報告書の作成、印刷および交付に係る費用
- 公告および投資信託約款の変更および解約に関する書面の作成、印刷および交付に係る費用
- 投資信託振替制度に係る手数料および費用等
(上記その他の費用については、当該投資信託の運用状況等により変動するため、事前に料率やその上限額等を表示することができません)

上記投資顧問報酬(0.75%)と上記投資信託の信託報酬(0.05%)の合計は、0.80%(年率、税抜)となります。