リサーチ・レポート
バンクローン:投資機会のパラドックス
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2023年インベストメント・アウトルック
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2022年12月30日
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バンクローン:投資機会のパラドックス |
1 | バンクローンは年初来で主要な株式及び債券指数をアウトパフォームしており、2022年11月中旬時点の最終利回りは約9.4%となっています。 |
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2 | 足元の環境下では、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント(MSIM)のバンクローン(変動金利ローン)チームが実践している徹底したクレジット・リサーチが特に効果を発揮します。 |
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3 | 2023年にバンクローンは、高いインカム、キャピタル・ゲインに加え、今後の金利上昇局面では更に高いインカム獲得の可能性があります。 |
市場の状況
バンクローンは、2022年末時点でちょっとした投資機会のパラドックスとも言える状況となっています。年初から11月中旬までの期間に、この資産クラスは主要な株式及び債券指数をアウトパフォームしてきました。それにも関わらず、2023年がこの資産クラスに割安に投資する良い機会になると考える十分な根拠があります。
2022年に米連邦準備制度理事会(FRB)は300bpの利上げを実施しましたが、バンクローンの変動金利という特徴のために、非常に魅力的な資産クラスとなりました。ローンはデュレーションの影響による価格下落リスクを回避した上、ローンファンドの分配金は2022年初めからほぼ倍増しています。
年初は、Morningstar LSTA Leveraged Loan Indexベースで平均価格98ドル、利回り4.5%で取引されていたバンクローンに投資家が大挙して押し寄せてきていました。しかし現在は、バンクローンの平均価格が約93ドル、最終利回りは9.4%となっているにも関わらず、買い手を見つけることが難しい状況です。これは「投資機会のパラドックス」とも言える事態です。
投資行動・今後の方針
私たちが手掛けていること
私たちはバンクローンが、このような環境下でクレジット・リサーチやアクティブ運用による徹底的なデューデリジェンスが特に効果を上げる資産クラスである、と常々主張してきました。
40名から成るバンクローン運用チームは、インプットコストや債務返済コストの上昇といった足元での様々なリスクから投資先企業が受ける影響を分析しながら、投資対象となる企業のローンへ投資しています。
この取り組みの一部として、必要に応じてポジションの規模を調整したり、場合によってはポジションを解消したりしています。しかし、2022年に入りインフレと金利が急上昇しているものの、短期的にクレジットへの懸念が非常に高いと見ている「ウォッチリスト」入りしたクレジットは依然として限定的です。
今後の注目点
投資家にとって重要な問題は、ローンの価格と利回りの水準が足元の市場で高まっている景気後退リスクを補うに足る十分な水準にあるかどうかという点です。
私たちはこの答えは「イエス」だと考えています。11月半ば時点のローン平均価格は額面から約7ポイント下落した水準でした。デフォルト時の回収率を70%という保守的な水準に仮定した場合(過去の回収率の水準は75%)でも、足元のローン平均価格水準は累積デフォルト率が23%でないと正当化できません。
このデフォルト率は、世界金融危機が起きた2008年の約2倍、(期間は短いものの)新型コロナウイルス不況時の約5倍の水準です。一方、足元の実際のデフォルト率は1%未満です。
年間デフォルト率は今後やや上昇すると予想しているものの、この水準は明らかに売られ過ぎであると考えます。
過去を見ると、投資時の利回りは投資後のトータル・リターンの優れた指針となっています。これに従うと、9.4%の利回りを持つバンクローン(2022年11月時点)に投資すると、キャピタル・ゲインを含むトータル・リターンはクーポン収入を上回ることになります。
私たちは「市場の底」を正確に言い当てることはできませんし、短期的なローン価格の推移を予想することもできません。とはいえ、バンクローンが大幅なディスカウントで取引されている結果、魅力的な投資機会が生まれていると考えます。現在は高いインカムとキャピタル・ゲインを獲得する好機であり、今後の金利上昇局面では更に高いインカム獲得の可能性もあります。
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バンクローン(変動金利ローン)運用責任者、ポートフォリオ・マネジャー
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