リサーチ・レポート
価値創造プロセスの開発、追求、執行に真摯に取り組んできたGPは、過去を上回るリターンを達成する可能性を秘めている
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2024年 アウトルック
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2023年12月26日
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2023年12月26日
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価値創造プロセスの開発、追求、執行に真摯に取り組んできたGPは、過去を上回るリターンを達成する可能性を秘めている |
1 | オペレーションの改善による価値創造がEBITDAと収益性の向上に不可欠であると考えます。 |
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2 | 負債コストの上昇は、プライベート・エクイティにとって明らかに逆風ですが、克服不可能ではありません。 |
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3 | ミドルマーケットの企業はより広範で多様なイグジットの機会に恵まれる可能性があると私たちは見ています。 |
市場の状況
プライベート・エクイティ(PE)は過去10年間にわたり、低金利とマルチプルの拡大を背景に良好なパフォーマンスを計上してきました。ただし、ジェネラル・パートナー(GP)にとって、今後もこれまでの10年間と同じけん引役に依存することは困難とみられます。これからは、プライベート・エクイティ投資にはオペレーションの改善による価値創造が、キャッシュフローと収益性の向上に不可欠であると私たちは考えます。
さらに、プライベート・エクイティ投資にとっての機会が拡大していることが伺えます。上場株式市場はプライベート・エクイティ市場よりも規模の面ではるかに上回るものの、上場企業数は減少しています。弊社の上場株式運用チームの最近の論文によると、米国の上場企業数は現在4,200社強(ピークに達した1996年の7,300社から減少)1であるのに対し、米国の非上場企業数は約73万5,000社2にのぼります。非上場企業は以前よりも非上場のまま長く存続するようになっており、プライベート・エクイティが以前にも増してそのための資金を供給しています。
投資行動・今後の方針
価値創造プロセスの開発、追求、執行に真摯に取り組んできたGPは、今後も継続して適正な水準で負債を調達することができ、新たな株式資本を呼び込むこともできるはずです。投資先企業のレバレッジが過剰、あるいは EBITDAの伸びが鈍いGPは、これらの分野で課題に直面する可能性があります。特に、オペレーションの改善やリーダーシップの強化、成長につながる買収などの恩恵を受けやすい企業に投資する傾向のあるスモール/ミッドキャップGPにおいて、負債や株式資本の調達に問題がないことが顕著になると私たちは予想しています。
負債コストの上昇は明らかに逆風ですが、克服不可能ではありません。モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント(MSIM)のミドルマーケットPE投資先企業について、約400~500bpsの資金調達コスト上昇をモデルで試算したところ、その影響はエントリーからイグジットまでの間に約7~10%のEBITDAの増加で相殺できることが判明しました。現在の高い資本コストを相殺するもう一つの方法は、取得価格を抑えることで、マルチプルにすると1倍分抑えられれば相殺可能です3。
今後の注目点
プライベート・エクイティ・ファンドは自分たちの保有資産の評価を切り下げるでしょうか?:バリュエーションは、EBITDAが計画通りに成長しており、クオリティが高く、レバレッジが適正水準である資産において、堅調に推移する可能性があります。一般的に、スモール/ミッドキャップ・セグメントでは、オペレーションの強化を通じてアルファを創出する機会が多く、企業の評価額を押し上げるか、少なくとも市場全体のマルチプル縮小圧力を免れる絶縁体として機能すると考えられます。過去10年間、このスモール/ミッドキャップ・セグメントの投資開始からイグジットまでの平均変化率は売上高が115%、EBITDAが124%でした4。
PEファンドのイグジットの見通しは?:資本市場の活動の停滞は依然として課題ですが、スモール/ミッドキャップGPはイグジット時の選択肢の多様性から恩恵を受けています。適切な規模の企業は、ストラテジック・バイヤー(同業他社)やファイナンシャル・バイヤー(PEファンド)への売却、または、今後一段と普及する見込みである単一資産継続ビークルを通じたセカンダリー売却も選択肢として追求できる可能性があります。最近開発されたのは、純資産価値融資(NAVレンディング)です。これは、単一の投資先企業ではなくファンドの原資産を担保に融資を行うもので、融資金はリミテッド・パートナー(LP)に流動性を提供するために使われます。勝者となるのは、ハンズオンによるオペレーション改善と賢明なM&Aを通じて、売上高と利益率の成長に注力するGPでしょう。
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グローバル・プライベート・クレジット&エクイティ責任者
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