リサーチ・レポート
グローバル・インカム:2023年は「ピボット・トレード」が債券市場をけん引する公算大
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2023年インベストメント・アウトルック
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2022年12月21日
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グローバル・インカム:2023年は「ピボット・トレード」が債券市場をけん引する公算大 |
1 | 2023年は米連邦準備制度理事会(FRB)が、より穏やかな金融引き締め政策に移行することを反映した市場になる可能性があります |
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2 | エージェンシーMBS、証券化商品、米国のデュレーション、エマージング市場債券などクレジット・クオリティの高いスプレッド商品が良好なリターンとなる可能性があります |
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3 | 米国経済の大幅な減速に伴い、インフレ率は継続的に低下すると予想します |
2022年の債券市場は、インフレが想定以上に上振れし、FRBが利上げを開始した結果、投資家によるデュレーション・エクスポージャーの削減と、景気減速見通しに伴う信用スプレッドの拡大の両方が引き金となって、広範な売りが出ました。
11月末までは逆イールドの状態が続き、短期ゾーンは売られ、長期ゾーンは買われました。しかし12月に入ると、FRBの「ピボット(政策転換)」をクレジット市場が織り込み始めた結果、若干のスプレッド縮小が見られ始めました。
FRBの政策転換がまだ起きていないのは明らかですが、市場は将来を織り込むという性質を持ち、投資家は現在、2022年後半の大半よりも緩やかなペースで2023年は利上げが行われることを見込んでいます。「ピボット・トレード(FRBの政策転換を見越した取引)」は既に市場に織り込まれ始めているとはいえ、2023年の債券の投資機会を検討する上でFRBの政策転換は大きな要因になると考えています。ここでは、最も魅力的と思われる3つの分野を紹介します。
クレジット・クオリティの高いスプレッド商品:特にエージェンシーMBSや一部の証券化商品では、スプレッドが拡大したままの状態で推移しており、ハイイールドや投資適格の銘柄で見られた縮小がそれほど見られていません。私たちは投資家が米国債よりもやや高めの利回りを求める状況を想定しており、それがMBSや証券化商品の魅力となって資金を引き寄せると予想しています。
米国のデュレーション:特に、イールドカーブの逆転を受けて、デュレーションは魅力的に見え始めています。短期ゾーンでの投資機会は明らかですが、10年物国債も利回りが直近のピークの4.20%から低下したとはいえ、3.60%から3.80%の範囲に位置するならば投資価値があると考えます。この投資機会を捉えるために、投資家にとっては米国債を直接購入するか、コア・プラスや地方債などデュレーションを重視した戦略が検討に値します。
エマージング(EM)債券:EM債券は、特に現地通貨建ての銘柄など、よりリスクの高いアセットクラスを好む投資家にとっては魅力的な投資対象になると考えています。米ドルは弱くなり始めていますが、歴史的にはまだ非常に強い水準にあります。2023年もドル安が継続した場合、これは現地通貨建てEM債券にとって好材料になると考えます。加えてEMの社債、つまりクレジットセクターは、通常米ドルが弱い環境において好調となることを申し添えます。
強調しておきたいのは、今後最も重要な変数は中期的なインフレ率であるということです。私たちは、米国経済の減速に伴う需要の鈍化と、様々な供給サイドの制約の改善に伴い、インフレ率は今後継続的に低下すると考えています。しかし、もしインフレ率が予想外に上振れしFRBがより積極的になるようであれば、債券市場は再び幅広く低迷する一年になると予想されます。
私たちは、FRBは利上げペースを緩やかにすると想定しています。FRBの政策担当者は、金融政策には「長く、多岐にわたる遅効性」が存在することを言及し始めていますが、私たちはこれを、FRBが政策転換に近づいていることを示すハト派的なメッセージと解釈しています。また、FRBが2021年末時点で皆が予想していたよりもはるかに多くのことを2022年に行ったことも暗示しています。要約すると、2023年の債券市場はこれまでより穏やかなFRB、及び、景気減速が市場に影響を与える可能性が高そうです。
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債券CIO
債券運用チーム
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