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グローバル・エクイティ・オブザーバー
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2024年1月19日

役員報酬:「インセンティブ(報酬)を提示してくれれば、それに見合う成果を上げる」

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2024年1月19日

役員報酬:「インセンティブ(報酬)を提示してくれれば、それに見合う成果を上げる」


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役員報酬:「インセンティブ(報酬)を提示してくれれば、それに見合う成果を上げる」

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2024年1月19日

 
 

現代の資本主義は、資産の所有者と、その資産を運用している企業の役員の利益が異なっていることから、「プリンシパル・エージェント問題(エージェントが、プリンシパルの利益に反して、エージェント自身の利益を優先する行動をとってしまうこと)」に悩まされています。ボーナスと業績連動型株式報酬から成る複雑な報酬パッケージを採用している役員報酬の分野は、2つの当事者の利益を一致させるように変化してきました。

 
 
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私たちが選好するインセンティブ制度は、目標が株主の利益に沿い、思慮深く、規律あるパフォーマンス・ベースの目標に基づいて構築されています。
 
 
 

Economic Policy Institute(経済政策研究所、米国のシンクタンク)によると、役員報酬の分野では最高経営責任者(CEO)は報酬を引き上げることに成功しており、現在では一般的な労働者の344倍の報酬がCEOに支払われています。これに対して、1965 年当時のCEOの報酬は一般的な労働者の21倍に過ぎませんでした1。このような過剰な役員報酬を整合性のあるものに改善する必要があり、まだ進展の余地があると考えられます。

私たちは長期の投資家として、顧客が(ポートフォリオを通して)保有する企業が、短期的なご都合主義ではなく長期的な判断を奨励するような報酬計画を策定することを望んでいます。結局のところ、私たちは、インセンティブが成果を生み出すというチャーリー・マンガー氏の主張に同意します。私たちが懸念しているのは、例えば1株当たり利益(EPS)に過度に重点を置くような誤ったインセンティブにより、経営陣が短期的な利益を高める判断が奨励され、長期的に複利効果を高めることができる機会を犠牲にしている可能性があることです。こうした短期的な視点に基づいて、消費関連企業が広告費を削減する、あるいは企業が大型買収を行い、低いリターンでも多額の資本を投入して短期的にEPSを押し上げるような、「拡大路線」に走る可能性があります。一方、報酬が効果的に管理されている場合には、主要な意志決定者の行動と企業の目標が合致するため、株主に対して、高いパフォーマンスや長期的なリターンが提供されます。

したがって、私たちは、報酬体系を評価するために独自のPay X-Rayスコアリング手法(X線のように報酬体系をスコアリングする、という意図)を使用し、報酬体系を改善させるために取締役会に対するエンゲージメント活動を行い、報酬体系に納得がいかない場合には反対票を投じるなどを通じて、非常に真剣にこの問題に対処しています。株主の利益のために、報酬体系の変更を促す私たちの取り組みは、豊富なリソースを有する当運用チームと、私たちがカバーしている企業を長期にわたり集中して保有することにより支えられています。これにより私たちは、報酬体系を改善するために必要な取り組みや時間に投資し、私たちの主張を述べるために取締役会にアクセスすることが可能となります。私たちは成功事例(議論から数年後になる場合も多い)を記録しており、粘り強く取り組むことで成果が得られるであろうことを示しています。要するに、私たちは、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資のコンセプトが注目を浴びるずっと前に、企業がどのように役員にインセンティブを与えるかについて20年以上にわたり企業に問いかけています。

重要な質問を行う

全てのセクターや業種の企業に対して、一様に適用できる魔法のような公式は存在していませんが、私たちは、運用チーム主導による企業へのエンゲージメント活動における広範な経験に基づいて、報酬に関していくつかの原則を確立しました。私たちが選好するインセンティブ制度は、目標が株主の利益に沿い、短期的には容易に操作することができない、思慮深く、規律あるパフォーマンス・ベースの目標に基づいて構築されています。個別の議決権行使の専門的な詳細に関わらず、当運用チームが尋ねるべき基本的な質問は以下の通りです。

  • その制度は、短期的または長期的にどのような種類の行動を奨励しているか?
  • そのインセンティブはバランスが取れているか、また事業の性質を踏まえて、インセンティブが道理にかなっているか(例えば、成熟した事業を成長させることが奨励され、リターンが犠牲になっていないか?成長事業が投資不足になることが奨励されており、それにより投資機会を逃していないか?)
  • 経営陣の利益になるように役員報酬が操作される可能性があるか?一見すると良好な指標が悪影響を及ぼしている可能性はないか(例えば、キャッシュフロー増大を目指す事が、必要な資本支出を阻害する要因になっている可能性はないか)?
  • 私たちが経営陣の実際の行動を監視し、その制度が機能していない、または悪用されているかどうかを見極めることが可能であるか?

Pay X-Rayで報酬を評価する

私たちは、企業のインセンティブ制度に関する包括的かつ厳格な分析のための枠組みとして、何年か前にPay X-Ray手法(X線のように分析する、という意図)を構築しました。私たちは、この取り組みのリソースとして、議決権代理行使のデータ・プロバイダーを活用していますが、データ・プロバイダーの推奨事項には全く縛られません。私たちは企業やその経営陣に関して詳細な知識を保有しているからです。Pay X-Rayでは、その企業のインセンティブ制度に関する詳細なスコアリングを、以下に提示されている4つのバケットに分けます。

1.      パフォーマンス指標:経営陣の報酬は何に基づいて支払われるか?

オーガニック成長(既存事業の成長)、売上利益率、およびフリーキャッシュフローなど、私たちが選好するいくつかの尺度があります。これらの理想的なバランスは、例えば、成長と利益率の改善が相殺されるように、会社の戦略的ポジションによって異なります。消費関連企業に関しては、短期的な利益目標を達成するために広告コストを削減するようなインセンティブが働かないようにするため、私たちは広告コストや販促コストを控除する前の利益または利益率を選好します。一般に、資本利益率は経営陣に資本価値を高めることを強いるとともに、低リターンの買収にペナルティを課すことになるため、私たちは資本利益率が指標の中に含まれることを特に望んでいます。

株主総利回り(配当とキャピタルゲインの合計を株価で割った比率)については、特に比較指標として使用する場合、企業の業績ではなくセクターによって大きく異なるため、私たちは尺度としてこの指標をそれほど重要視していません。1株当たり利益(EPS)については、「拡大路線」に基づく買収(たとえ資本収益率が低くても)により、あるいは企業の負債を増やすことにより、EPSを押し上げることが可能であるため、私たちはこの指標も重要視していません。

2.      報酬支払メカニズム:経営陣の報酬はどのように支払われるか?

オプション価値の非対称性により、(株価を引き上げようとして)過度なリスクテイクを促す可能性があるため(特にオプションがアウト・オブ・ザ・マネーになると、株価をオプション行使価格まで引き上げようとして)、私たちは企業がオプションではなく株式を発行することを選好します。また、単に株式の支給を制限する「ペイ・フォー・ステイ(報酬を得るために、経営陣は解雇されないことだけに注力する)」よりも、株式支給を業績に比例させることが望ましいと考えます。その場合、報酬を得るためには、経営陣は目標を達成する必要があります。

3.      権利確定期間:経営陣の報酬はいつ支払われるか?

これは、経営陣が単に短期的な目標を達成するのではなく、長期的な成功を目指すことを奨励するため、「長ければ長いほど良い」ケースに当てはまります。適切な報酬指標を設定している制度でさえも、十分な権利確定期間を設けていなければ意味がないものになる可能性があります。また、パフォーマンスの判定期間の終了後まで株式の発行を先送りすることも望ましいと考えられます。このことは、役員が退任する場合において最も顕著であると言えます。つまり、経営陣が退任する時点に向けて事業を膨らませ、後でそのツケを後任者に回すことで、事業が台無しになることもあります。

4.      悪巧み:経営陣はどのような手口を企んでいるか?

上記のコア指標に加えて、私たちは「悪巧み」と呼ぶ、つまり経営陣が報酬を得るために企む可能性のある駆け引きについても懸念しています。これらには、状況が不利な場合に事後的に目標を変更すること(環境が企業に有利な時に、目標を厳しくするようなケースは多くないと聞いても驚かないでしょう)、余りも簡単に達成できる目標、または数値が開示されていない目標を設定すること、策定された制度に上乗せされて謝礼が経営陣に支払われること、失敗により経営陣が解任された場合にも巨額の報酬が支払われることなどが含まれます。

 

運用チーム主導によるエンゲージメントと議決権行使は、重要なツールである

私たちは、有望なPay X-Rayスコアを達成する企業だけで無く、改善の兆候を示している企業を探しています。この結果を企業に対するエンゲージメントの際に伝えます。年初来(2023年9月30日現在)でエンゲージメント活動を行った企業の25%については、役員報酬に関する対話を行いました。上述したように、集中投資のポートフォリオで運用資産残高(AUM)が大規模であることから、私たちは経営陣に接近することが可能となっています:グローバル・ポートフォリオでは、保有銘柄の70% ~ 85%において、各企業の浮動株の少なくとも0.5%を保有しています。

私たちは報酬に関して各企業に問いかけることに加え、それに関する議決権行使も行います。2023年上半期には、私たちが運用している戦略全体で保有している企業の78社において株主から経営陣に対して提示された244の報酬関連議案に関して、議決権行使を行いました。この内の51件(244件の21%)の議案に反対票(つまり経営陣に賛成)を投じました。さらに、経営陣に対して反対票を投じた際の47%(企業数で37 社)は、少なくとも1件の報酬関連議案に関するものでした。

最も一般的で、かつ頻繁に注目を浴びる議決権行使としては、企業の役員報酬に関する承認が挙げられます。これらの議案は、個人ベースに関するもの、あるいは役員全体に関するものになる場合があり、会社毎の権限により異なります。

折に触れて、驚くような金額が議案に上程されことがあることから、報酬額を設定された目標に対して、絶対的および相対的の両方の側面で評価する必要があります。2023年上半期には、戦略全体で保有している企業でそのよう議案が79件あり、私たちはその内の35件(79件の44%)に反対票を投じました。

私たちは、議決権行使を報酬に関する議案に限定しているわけではありません。以前に報酬に関して反対票を投じた議案において、このポイントを強調したい場合には、さらに踏み込んで(エスカレーションの一環として)、報酬委員会のメンバーの選出に関しても反対票を投じることがあります。2023年に入ってからの6ヵ月間において、報酬支払い計画に対する継続的な懸念を理由に、3つ異なる企業で報酬委員会の議長の選出に反対票を投じました。また、これらの企業の内の1社については、さらに踏み込んで(エスカレーションの一環として)、その企業の報酬委員会のメンバーであった2名の取締役の選出にも反対票を投じました。

「プリンシパル・エージェント問題」を踏まえると、役員報酬は企業や株主の長期的な利益を生み出すように経営陣を動機づける上で重要な手段であると言えます。したがって、取締役会や経営陣が役員報酬を正しく理解し、長期的なアクティブ運用戦略がモニタリング、エンゲージメント、議決権行使などのプログラムを通じて、取締役会に説明責任を負わせることが極めて重要であると言えます。この様にして、私たちはプリンシパル・エージェント問題などにおける受託者責任に対して、非常に真剣に取り組んでいます。

 
 

1 出所:2022年におけるCEOの報酬に関する経済政策研究所のレポート。2023年9月21日発行

 
bruno.paulson
マネージング・ディレクター
インターナショナル・エクイティ運用チーム
 
 
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