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2023年6月29日

診断検査:健康の改善に貢献する主力要因

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2023年6月29日

診断検査:健康の改善に貢献する主力要因


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診断検査:健康の改善に貢献する主力要因

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2023年6月29日

 
 

ヘルスケア企業の高い複利的増益という「聖杯」を支えるものは、価格決定力、参入障壁、最終消費者による「選択余地のない」需要です。最終消費者による選択余地の無い需要は、投資家にとっての複利的リターンに安定をもたらすことができる一方、他のステークホルダーには厳しい面も示唆しています。つまり、患者にしてみれば、「他の選択肢がない」ということです。「選択余地が無い」ということは、医療システムに問題が生じるということを、多くの場合意味します。病院やヘルスケア企業は、予算の逼迫やコスト増大、患者の急増などに見舞われても、治療を減らすことができないからです。

 
 

この点を踏まえると、「価値ある医療介入とは何か?」という疑問が生じます。診断検査と、病気の早期段階でのスクリーニングの普及により、患者の状況改善というメリットだけでなく、医療支出を最適化する可能性ももたらされるというのが私たちの見解です。診断検査は医療方針の70%を決定する情報を提供しているにもかかわらず、医療支出における割合はわずか2~5%にとどまっています1

 
 
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診断検査と予測分析の併用により、臨床医が治療方針を決定する際の精度が向上するだけでなく、患者の入院治療を防ぐことも可能に
 
 
 

疾病コストの削減

今年行われた世界経済フォーラム年次総会2023(ダボス会議)で、私たちが保有する英バイオ医薬品銘柄の会長が、「疾病コストの削減」について語ったことは新鮮に感じられました2。ヨハンソン会長は講演の中で、この目標の達成の可否は、薬品のみの開発よりは、むしろスクリーニングと早期診断にあるとの考えを明確に示したのです。これは、世界最大手の医薬品開発企業の会長の発言として興味深いものですが、医薬品企業の研究開発(R&D)費が莫大であることを考えれば、正当な見解といえるかもしれません。推計では、世界のがん研究開発費は年間約500億米ドル3とされていますが、生存率の改善は遅々として進んでいません。大手製薬会社によって開発されるがん治療薬は一般的に、進行したがん疾患を対象として、薬を使うことで生存期間の中央値を月単位で伸ばすことができますが、年単位ではありません。1992年から2022年までの30年間で、米国人女性でステージの進行した乳がん患者の生存率は2倍に延びたとはいえ、まだ29%です4

生存率を改善するためには、診断検査と、病気の早期段階でのスクリーニングが、非常に大きな成長の可能性を持っていると思われます。がんの場合、早期に治療するほど、医療処置による生存期間延長の可能性がより高くなります。乳がんを例にとると、米国人女性の乳がん患者(転移無し)の5年生存率は99%です5・6。しかし、転移がある場合の生存率は大幅に低下し、29%となります。この二つの生存率の違いは、がんの発見・診断のタイミングの違いなのです。

診断検査と予測分析の併用により、臨床医が治療方針を決定する際の精度が向上するだけでなく、患者が治療のために入院するのを防ぐことも可能になります。集中治療室では、外科的治療が必要な見込みの高い患者を確定するために、予測アルゴリズムが使われています7。その結果、病院での死亡率の減少が報告されているのです8。このことに加え、調査を行った医療機関の経営陣の39%が、予測分析と診断検査の利用によりコストが削減されたと答えています。

診断検査とスクリーニングの普及によって医療システムにもたらされるコスト削減は、大きなものになり得ます。たとえば、米国ではある特定の種類の肺がんの治療費は、年間23万1,000米ドルと推計されています9。これを、年間1万9,000米ドルのスクリーニング費用と比較すると、治療費の1割未満ということになります10。さらに、診断検査によって医師が正しく病気の種類を特定できれば、本来そのがん患者には効果が期待できないような(見当違いの)投薬をせずに済み、医療システムにおける高額な医療費の無駄を防ぐことができます。このように、特定の診断検査によって、臨床医はよりコスト効率の優れた治療が可能にもなります。

適切なバランスをとること

もちろん、「現在のスクリーニングレベルを改善すること」と、「全人口に対するスクリーニングを頻繁に実施することによるコストで、医療システムに過度の負荷をかけることがないようにすること」の間でバランスを取る必要があります。全人口の肺がん検査を年間1万9,000米ドルの費用をかけて実施することの負担は、決して小さくはありません。また、過剰診断や、結果的に検知が必要ではなかったような小さながんでも検査を受けさせられる「擬陽性」のケースをめぐる問題もあります。おそらく、早期発見の最も良い例は、最も古い事例でしょう。パップテスト(子宮頸がん細胞診断)は、発明されてから40年後の1960年代にやっと普及しました。それ以降、子宮頸がんの発生率と死亡率は50%以上下がっています11。このように、有効性にもかかわらず充分な実施に40年かかったことから、コスト、正確性、行動面での適応のバランスを取ることは簡単ではないということがわかります。

また、スクリーニングは可能でも、現状では治療処置が限られている疾患の場合はどうするか、という問題もあります。この適例が、アルツハイマー病発症の遺伝子リスクを調べるスクリーニング検査です。オーストラリア人俳優のクリス・ヘムズワースは先頃、遺伝子検査でアルツハイマー病の発症リスクが高いことがわかったことを明らかにしました。同氏が持っているある遺伝子は、その遺伝子のコピーを全く持っていない人に比べて、アルツハイマー発症のリスクが8~12倍であることが判明しました12。この情報はリスク因子の管理という点では有益であり得ますが、誰もがこのリスクを管理するための処置(運動や食事、実験的治療など)を取り入れられるとは限りません。この検査により、患者は自身がアルツハイマー病を発症する遺伝子リスクが高いことは知ることができますが、治療法を得られるわけではありません。この検査にメリットがあることは確かですが、倫理面では答えよりも多くの疑問を生みかねません。このように、診断・スクリーニングと治療処置の間で、難しいバランスを取ることが必要になります。

診断検査企業は、人々の健康の改善と、ヘルスマネジメント企業にとってのコスト管理という、非常に重要な潮流の中にあります。こうした診断検査企業は、高水準の継続的売上や参入障壁というメリットを享受することが多く、つまり、一度ある診断機器が導入されてしまえば、そのメーカーはその機器で行うさまざまな種類の診断検査の際の消耗品を販売することになります。これにより、高い利益率が期待でき、売上が予測可能な「虜になった」顧客を確保できます。これらの特長により、診断検査企業は投資対象である高クオリティ企業となり得るのです。

私たちが運用するグローバル株式ポートフォリオでは複数の­診断検査企業を保有しています。私たちが保有する幾つかのライフサイエンス銘柄は、売上高の4分の1ないし3分の1を診断検査収入が占めています。それらの企業は、需要が集中して成長著しい、診断検査の最終市場(つまり医療現場)において大きなシェアを占めています。こうした企業のイノベーションは、診断検査の質、範囲、効率における改善を可能にしています。例えば、私たちが保有する米国に本社を構える多国籍医療機器・ヘルスケア企業は、脳震盪を検査し、脳損傷による影響を15分以内に予測できる血液検査を開発しています13

診断検査企業のもう一つの顧客は、製薬・バイオテクノロジー業界です。多くの場合、診断検査企業は、「コンパニオン診断検査」の提供を通じて、医薬品開発プロセスにおいても重要な役割を担っています。診断検査は多くの場合、医薬品と並行して開発され、その医薬品が有効である患者を特定し易くすることに貢献します。例えば、私たちのグローバル株式ポートフォリオが保有する米国の分析機器製造会社は、ポートフォリオが保有するバイオ医薬品企業と提携し、同社のがん治療薬の診断テストを開発しています。分析機器製造会社は、臨床試験の失敗、特許切れ、価格圧力といった従来の製薬会社の収益に関連するリスクを負う事無しに、回復力のある最終市場の需要や規制当局による保護が得られるという利点があります。

結論

診断検査や早期スクリーニングは、病気のコストを削減する可能性を考えると、医療エコシステムの歯車として、あまり使われていないとは言えず、非裁量的な(選択余地が無い)ものであると考えるのが妥当であると思います。診断薬に対する需要は、より広範な早期スクリーニングの使用事例が多いことから、十分に裏付けられていると考えます。

これらの企業は、参入障壁と継続的な売上に支えられ、投資家に対して高い投下資本利益率を提供することが可能です。またこれらの企業は、より優れた業績とコストの削減を可能にする、非常に重要な動向の中にあります。このような企業は、治療法の大きな進歩で見出しを飾ることは稀ですが、目に見えない表面の下で、生命を脅かす疾患による死亡率を大幅に改善する強い可能性を秘めています。

 
 

1ᅠ出所:Roche Diagram、「Breaking Silos to Unlock the Value of Diagnostics」、2017年版 第2巻。

2 出所:BBC News、「Technology can help the NHS, says AstraZeneca boss」、2023年1月23日。

3 出所:McKinsey、Our InsightsOur Insights:「Pursuing breakthroughs in cancer-drug development」 2018年1月12日発行。

4 出所:Angela B. Mariotto、Ruth Etzoni、Marc Hurlbert、Lynne Penberthy およびMusa Mayer、「Estimation of the Number of Women Living with Metastatic Breast Cancer in the United States」Cancer epidemiology, biomarkers&prevention:American Association for Cancer Researchの 刊行物で、American Society of Preventive Oncologyとの共著。2017年 5月18日オンライン公開。

5 出所:Cancer.net、「Breast Cancer: Statistics」。統計は、米国がん協会の出版物「Cancer Facts & Figures 2023」および「Cancer Facts & Figures 2020」、the International Agency for Research on Cancer website; and the National Cancer Institute’s Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Programから引用。すべての情報源は2023年2月にアク セスしたもの。

6 出所: 5年生存率=がんが発見されてから5年以内に生存している患者の割合。

7 出所:Philips.com、「Predictive analytics in healthcare: three real-world examples」2020年6月12日 American Society of Preventive Oncologyとの共著。2017年5月18日オンライン公開。

8 出所:philips.co.uk、「Early Warning Score reduces incidence of serious events in general ward”」

9 出所:siemens-healthineers.com、「Lung cancer screening: A lever to reduce cancer mortality」

10 出所:siemens-healthineers.com、「Lung cancer screening: A lever to reduce cancer mortality」

11 出所:cancer.org、「History of Cancer Screening and Early Detection: 20th Century to Present」、最終改訂2021年5月17日。

12 出所:National Institute on Aging、「Study reveals how APOE4 gene may increase risk for dementia」、2021年3月16日、nia.nih.gov.で入手可。

13 出所:Abbott「New Study Shows Abbott’s Blood Test for Concussion Could Predict Outcomes From Brain Injury and Inform Treatment Interventions」プレスリリース(2022年8月11日) 。­­

 
helena.miles
ヴァイス・プレジデント
インターナショナル・エクイティ運用チーム
 
 
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