フラッシュ・レポート
EDGE:ブロックチェーン
 
 

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EDGE:ブロックチェーン

 

この1年でビットコインのような仮想通貨の相場 が乱高下したため、ビットコインとその基盤技術 であるブロックチェーン技術が世間の注目を集め ました。

 

EDGEへようこそ。

モルガン・スタンレー・インベストメント・マネ ジメントのカウンターポイント・グローバル株式運用チームは、自動 運転車、機械学習、遺伝子編集など、広範囲 に影響を及ぼすと考えられるビッグ・アイデ アに対する独自の分析を発信しています。

カウンターポイント・グローバル株式運用チームの長期投資の考え 方としては、分野の枠にとらわれない見通 しや洞察、思考を重視するとともに、投資プ ロセスにおいては持続可能な競争優位性を 有するユニークな企業の発掘に注力してい ます。本レポート「EDGE」を通じて、運用 チームが変化をどのように捉えているか、ま た、長期的に投資環境を著しく変化させる と考えられるパターン認識のプロセスにつ いて、運用チームの視点を共有していきた いと思います。

本レポートは、運用チームの知的好奇心、柔軟 性、見通し、自己認識、およびパートナーシップ に根差した長期投資の枠組みの核となって いる、伝統的なファンダメンタル・リサーチ の手法を補完する目的で作成しています。

 

ブロックチェーンとは、本来、保管されているデータの完全性を 確保するために暗号技術を活用する分散型台帳技術です。ブ ロックチェーンは、誇大に宣伝されてはいるものの、基本的には、 データの管理自体を、そのデータの利用者に分散させるという新 しいデータベースの構築手法なのです。この新しいデータベー スの構築手法は、暗号技術と、参加者がデータの完全性を確 保するために行う作業の対価としてトークン(例:暗号通貨)を 利用することで可能になります。ブロックチェーンがこれほど既 存の基準を打ち砕くような革新的な技術であるのは、台帳を共 有することで、信頼関係のない相手との間で取引を行いたい場 合に仲介者を通さなくても信用を担保し、認証を行うことができ るからです。その結果、ブロックチェーンによって金融仲介機関 が淘汰される可能性があります。

ブロックチェーンの仕組み

TCP/IP1 がインターネットを支えているプロトコル(コンピューター間 で通信を行う際の規約)であるように、ブロックチェーンは共有台 帳を支える一種のプロトコルです。インターネット上にさまざまなウェブサイトが存在するように、ブロック チェーンにも有名なビットコインやイーサリアム をはじめとするさまざまなブロックチェーン技 術があります。非許可型ブロックチェーン2 は個々に設計が少し異なりますが、おおむね 共通点があります。

ブロックチェーンがこれほど既存の基準を 打ち砕くような革新的な技術であるのは、 金融仲介機関の排除につながるからです。
 

非許可型のブロックチェーンは、一般に公開 されており、参加者は誰でも全データを参 照できます。ブロックチェーンは、1ビットコイ ンの所有権から不動産の所有権情報まで、 あらゆる情報をこのように共有することで効 力を発揮します。データが一般に公開され ているため、データの完全性を確保するに は注意が必要になります。そこで、ブロック チェーンの要となる革新的な技術、つまり、 暗号技術やプルーフ・オブ・ワーク(PoW) によって共有台帳のコンテンツの安全性を確 保する仕組みが役立つことになります。

ビットコインのブロックチェーンを例に考えて みましょう。10分間隔で新しいブロックが チェーンに追加され、各ブロックは3つの要 素―(1)チェーンに追加された新しいトラン ザクション(取引)、(2)1つ前のブロックのハッ シュ値(入力文字列から生成された固定長 の値)、(3)ナンスと呼ばれる乱数―で構成 されています。世界中のマイナー(マイニン グを行う個人または組織)がビットコインのプ ロトコルで定められた現在のブロックのハッ シュ要件を満たすナンスを探し出そうと競い 合います。このプロトコルでは、次のナンスを 発見するために投じているコンピューターの 処理能力に応じて採掘難易度を動的に変更 し、新しいナンスを算出してチェーンに新しい ブロックを追加するまでの間隔が常に10分 間になるように調整しています(図表1)。有 効なナンスを最初に算出したマイナーが報酬 としてブロックチェーンからトークン(この例 ではビットコイン)を獲得します。プルーフ・オ ブ・ワーク(PoW)と呼ばれるこのトークンは、 トランザクションを検証するためのインフラ投 資・運用を促すマイナー向けの対価です。

検証のメカニズムはブロックチェーンによって 異なりますが、いずれも、共有台帳の取引を 検証した者が報酬としての対価を得るという 前提で行われます。取引の検証には時間、 コンピューターの処理能力、電気代などの実 質的なコストがかかります。

この仕組みでは、現在のブロックのハッシュ 値を生成するために1つ前のブロックのハッシュ値が必要になるため、過去にさかのぼっ てブロックチェーンの既存の記録を個別に改 ざんする(例:ビットコインの額を増やす)こ とはできません。記録が改ざんされると、す ぐにブロックチェーン内にある他のノード(ネッ トワークに接続されている端末)との矛盾が 生じ、プロトコルは他のブロックと矛盾したブ ロックを無視します。

図表1: ハッシュ要件を満たすナンスを最初に発見しようと競い合うマイナー
 
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この仕組みでは、現在のブロックのハッシュ 値を生成するために1つ前のブロックのハッシュ値が必要になるため、過去にさかのぼっ てブロックチェーンの既存の記録を個別に改 ざんする(例:ビットコインの額を増やす)こ とはできません。記録が改ざんされると、す ぐにブロックチェーン内にある他のノード(ネッ トワークに接続されている端末)との矛盾が 生じ、プロトコルは他のブロックと矛盾したブ ロックを無視します。

要するに、ブロックチェーンはオープンな共用 技術であり、マイニング作業に対して報酬と しての対価を与え、安全性の仕組みを取り 入れることで、チェーン全体の完全性を確保 しているのです。

なぜ既存の基準を打ち砕くような 革新的な技術であるのか

ブロックチェーンがこれほど既存の基準を打 ち砕くような革新的な技術であるのは、台帳 を分散化しているからです。ブロックチェー ンの全ユーザーが同じ一連の事実、つまり 台帳に合意しています。この合意によって、 参加者間で信頼関係を構築する必要がなく なり、新たな可能性が生まれます。例えば、 不動産から証券、仮想通貨まであらゆる資 産の所有権情報をブロックチェーンに入力し たとしましょう。二者が同じブロックチェーン を利用した取引を希望すれば、金融仲介機 関を通さなくても相手方が主張通りの所有権 を持っているかどうかを互いに検証すること ができます。ブロックチェーンを利用すれば、 金融取引の決済機能が事実上不要になり、 当事者は取引執行から決済までほぼ瞬時に進めることができます。そのため、決済に要 する時間も数日から数分に短縮されます。こ の変化によって、決済に伴う事務管理コスト のみならず、取引が終了するまでの証拠金 の差し入れに関するコストも不要になる可能 性があります。

既存の金融機関がブロックチェーン技術を 導入して取引を促進することも可能ですが、 ブロックチェーンには既存の金融機関を回避 する新たな決済ルートを実現する可能性も あります。特に、不正行為やクレジットカード 利用におけるチャージバックリスクが高いeコ マースでは、決済手段の一つとして仮想通 貨への注目が高まっています。仮想通貨に 対応することで、加盟店は割高なクレジット カード手数料を回避し、総コストを下げること ができます。企業各社も、さまざまな金融用 途にブロックチェーンを活用することが可能 です。例えば、tZERO(仮想通貨の一種) はブロックチェーンを利用して主な仲介市場 に狙いを定めています。

加えて、ブロックチェーンには、まだ存在して いない「スマートコントラクト」を展開すると いった新たな可能性もあります。スマートコ ントラクトとは、コンピューターコードに書き込 まれた自動履行型の契約です。取引の両 当事者が合意した条件が満たされれば、ス マートコントラクトが透明性と不可逆性を確保 しながら自動的に履行されます。スマートコ ントラクトの魅力は、取引コストを削減できる という点にあります。

ビットコインが金融業界の持続的な仕組みに なるのか、それとも一過性の流行で終わる のかはまだ不透明です。とはいえ、ビットコイ ンは本質的に価値の貯蔵、決済の手段、価 値の尺度という貨幣の三大機能を備えてい ます。特に、金融不安を経験してきた国々 では、ビットコインが現地通貨に代わる魅力 的な選択肢になるかもしれません。不確実 性に対するヘッジとして、金が長らく担ってき たような役割を果たす可能性があります。ち なみに、現在流通しているビットコインの総額 が約1億2,500万ドルであるのに対し、これ までに採掘された金の価値は約7.9 兆ドルに も相当します。ビットコインが国際舞台で金 のような機能を果たすようになれば、価値が 集中するかもしれません。

課題

第一は、クリティカルマス(爆発的な普及を 促す最低限の普及率)の獲得です。ブロッ クチェーン関連技術はネットワーク効果の恩 恵を受けます。つまり、ネットワークの利用者 が増えるほど、他の利用者にとっての価値が 増すわけです。ネットワーク効果は成熟した ビジネスの大きな強みですが、小規模なネット ワークは大規模なネットワークほど最終顧客 にとっては価値がないといった理由から、な かなか始まらないという弱点があります。クリ ティカルマスを獲得するブロックチェーンが現 れなければ、従来の仕組みに勝るメリットを 実現できない可能性があります。

第二は、規制面の見通しが不透明だという 点です。世界中の規制機関がブロックチェー ン関連ビジネスのあらゆる側面に目を光らせ ています。例えば、中国と韓国では、人気 の高い資本調達方法、イニシャル・コイン・オ ファリング(ICO)が禁止されています。ブロッ クチェーンでできることを制限した新しい規 制によって、従来の金融取引手段より魅力 が減少、または消失する可能性もあります。

第三は、電力消費やストレージ需要の拡大 です。ブロックチェーンの拡大に伴って、克 服できないほどの課題が生じる恐れがありま す。ブロックチェーンは分散型の台帳であり、ブロックチェーン上に保存された全データを あらゆるノードで利用するため、システム全 体に多くのノードやユーザーが加われば、シ ステムのストレージの需要が急激に拡大しま す。ビットコインのトランザクションを検証する ためのプルーフ・オブ・ワークの計算にも大 量の電力が必要です。ある推定によれば、 ビットコインのプルーフ・オブ・ワークの計算に 使用される電力は、デンマーク全土の電力 消費量に匹敵するそうです。このまま成長 を続けるには、プロトコルを修正して資源の 消費量を削減する必要があるでしょう。

まとめ

ブロックチェーンはまだ草創期にあります。将 来的にはインターネットのように普及する可能 性がありますが、対処すべき課題も少なくあ りません。インターネットと同じように、ブロック チェーンネイティブな企業と、ブロックチェーン 技術を導入して既存のビジネスプロセスを改 善し、新たな仕組みがもたらす新たな市場 機会を開拓する企業が混在することになるで しょう。ブロックチェーンは今後もマインドシェ アを拡大していく技術だと確信しています。

 
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MSIMカウンターポイント・グローバル株式運用チーム
 
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業界経験年数、MSIM在籍年数、およびチーム在籍年数は2018年11月現在です。

 

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