フラッシュ・レポート
2018年は目を大きく開いて
 
 

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2018年は目を大きく開いて

 

2017年初めの我々の主な関心事は、全般的にバリュエーションが高水準にあったことで、それに加えてその後1年間のマクロ経済・政治(中国を含む)に対する大きな不安、米国と欧州の政治が間違った方向に進むリスク、債務の急増と景気低迷を要因としたショックに対する金融システムの脆弱性などが懸念材料でした。これらの懸念のいくつかが現実のものとなれば、潜在的リスクの性質を踏まえると、リスク資産の価格下落耐久力が全体的に低いため、大幅に下落する可能性が高いと我々は見ていました。ボトムアップ戦略のストック・ピッカーである我々は、多かれ少なかれ株式市場全体としては、価格下落耐久力が殆ど無いと考えました。にもかかわらず、2017年に大部分の主要国の株式指数は米ドル建てで20% ~ 25%上昇しました1。前述の懸念は、良く言って未熟、悪く言えば間違いとなりました。しかし、2017年に市場に熱狂して興奮気味の米ドル・ベースの投資家は、市場が大きく上昇した一方で、大きく下落したものもあったこと(米ドルが一例)を忘れてしまったのかもしれません。

2018年を迎え、我々のバリュエーションに対する懸念は強まっている一方で、マクロ経済に対する懸念は後退しています。ただし間違った方向に行く可能性は十分にあります。簡潔に述べると、MSCIワールド・インデックスの実際の増益率が予想(15%)を5年ぶりに上回り、めずらしく期待を裏切らなかったことを受けて、市場ではバリュエーションが上昇しました。世界中で高いGDP(国内総生産)成長率が相次いで発表されていますが、予想通りに景気が回復しないのであれば、市場では実際の減益を織り込んでバリュエーションが引き下げられるでしょう。いわゆるダブルパンチです2

 

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MSCIワールド・インデックスの実際の増益率が予想(15%)を5年ぶりに上回り、めずらしく期待を裏切らなかった
 

米国では、リベラル派が大混乱となり、大騒 ぎしているものの、主要リスク(中国との貿 易戦争から北朝鮮との核戦争まで恐ろしい 危機が混在している)はいまだ顕在化して おらず、トランプ大統領の政策は市場にとっ ておおむね追い風(税制改革が最大の功 績)となっています。称賛に値しますが、議 会は紆余曲折を経て一つの法案を通過さ せました。それは、米国経済に長期的に最 大のプラスの影響をもたらしうる税制改革で す。短期的には米企業全体に与える影響 は限定的であるかもしれません(純粋な国 内企業を除いて、法定税率通りに納税して いる主要な米国企業はわずか)。一方、長 期的に見て大きな問いとなるのは、税制改 革、短期的な設備投資、レパトリエーション (企業が海外に持つ利益の本国還流)減 税の組み合わせが、設備投資を循環させ、 生産性を現在の低水準から引き上げるの に十分であるかどうかです。近年、米国企 業は全般的に、設備投資を増やすことよりも 自社株買いの実施に積極的でした。その ため、生産性がおおむね犠牲となってきまし た。強気派は、税制改革およびIoT(モノ のインターネット)やAI(人工知能)がもたら す成長機会が組み合わさることで、投資の 長期サイクルが始まり、多くのセクターで無 駄が取り除かれ、コストが大幅に削減され、 これらの多くが利益率の向上につながり、 過去最高利益の更新が今後も続くと言うで しょう。弱気派は、税制改革がプラスの影 響をもたらす可能性はあるものの、米国企 業は自社株買いを従来通り続け、労働者が 歴史的に見て低水準の労働分配率の引き 上げを求める中、米国の景気が冷え込むリ スクは別にしても、利益率は標準的な水準 に収まる可能性があると反論するでしょう。

また、2018年のS&P500指数の増益率 は前年と同じく12%と予想されていること を鑑みると、市場がバリュエーションに関 して心配しすぎていないということは意外 ではありません。強気派(多く存在)は、 S&P500指数の12カ月先予想利益ベース PER(株価収益率)は18.2倍であるものの、 1997年~ 2017年の長期平均の16.0倍を 14%上回っているにすぎず、なぜ大騒ぎするのかと言うでしょう。弱気派(我々を含む) は、企業収益のクオリティはさておき(米国 企業の利益調整は過去最大規模)、自社株 買いを活発に実施した後、企業債務はほぼ 過去最高水準にあり(利益率も同様)、現在 のS&P500指数の債務調整後企業価値の 売上高倍率(EV/Sales)は2.44倍と、ピー クの2000年の2.98倍に近づいていること から、企業収益の平均への回帰という古い 考え、または米国経済が後退するというリス クは無いとしても、黄色信号が点滅している ことは明らかであると指摘するでしょう。

長期バリュエーション指標であるシラーPER を見てみると、2017年初めに米国市場で は27.9倍と高水準でしたが、同年末にはさ らに高水準の32.4倍となっています。AI、 IoT、Eコマース等が強力に組み合わさる ことで、すでに最高水準の利益率は一段 と上昇し、大幅な増益が続くという、ハイテ クを信奉する強気派の主張が正しくない限 り、多くの期待が株価に織り込まれている 中、バリュエーションに対して黄色信号が 点滅していることは明らかでしょう。かつて バリュエーションのみを要因として強気相場 が崩れたことはありませんが、市場がバリュ エーションに再度注目した時に、問題が生じ ると我々は考えています。

2017年初めに世界は、トランプ大統領以 外にも、深刻な地政学的リスクに直面して いました。欧州は政治的に崩壊するリス クにさらされ、政治が間違った方法に進め ば、ユーロ圏が崩壊する可能性がありまし た。いくつかの不安定な局面がすぎ、オラ ンダおよび特にフランスでの選挙、さらには 意外な結果となったドイツでの選挙といった 懸念を市場は消化し、ユーロ圏経済の回 復を示す指標が相次いで発表されたことに 注目が集まりました。フランスではマクロン 大統領が率いる政党が議会で圧倒的多数 の議席を獲得し、まさに奇跡の中の奇跡で あるかのように、改革(特に労働市場の改 革)が実際に進み、今後も続くと見られるな ど、全体として予想外の明るい結果となる 中、市場は今までのところ好調に推移して います。英国のEU離脱をきっかけとして欧州がドミノ倒しになるのではないかという 我々の懸念は、今のところ杞憂に終わって います。ばったりと倒れたドミノは英国のみ で、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨー ク市長は、英国のEU離脱を「国がかつて 下した唯一の最も愚かな決断である」と印 象的に表現しています。実際には、今まで のところドミノが倒れてもプラスの影響しか なく、英国は自ら犠牲になることで、欧州の 好パートナーであるフランスが同じ運命にな らないために、マクロンに投票するようフラン ス国民を駆り立てたと言えるでしょう。しか し、欧州での選挙に関して言えば、我々は、 フランスやドイツで政治状況が恐ろしく誤っ た方向に向かう可能性が高い事ではなく、 むしろ2017年の総選挙をなんとか乗り切っ たイタリアの抱えるリスクのほうを懸念してい ました。イタリアはユーロ加盟国の中でも負 け組であり、自ら改革できないこと、および 主に国際競争力の維持を目的とした自国通 貨リラの切り下げというかつて保有していた 権限を失ったことが要因となり、20年にわた り景気が停滞しています。これ以外にも、イ タリアには、選挙の時期を迎える欧州主要 国の中で、最も欧州統合に懐疑的な勢力 があります。足元では、2018年3月のイタ リア総選挙の結果次第で、ユーロに対して 行動を起こす政権が誕生することがリスクと なっています。そうなれば、欧州で政治リス クが再燃することは間違いないでしょう。

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足元では、イタリア総選挙の結果次第で、ユーロに対して行動を起こす政権が誕生することがリスクとなっています。そうなれば、欧州で政治リスクが再燃することは間違いないでしょう
 

2018年については、世界各国で同時に景 気が拡大すると予想されます。しかし、我々 は、成長は小幅にとどまる上、リスクは多分 にあり、市場はこのことを織り込んでいくと考えています。世界の主要な構造問題(債務、 未知の領域である量的緩和縮小、不安定 な政治、中国など)の中で、解消されたもの はほとんど無いと考えています。簡潔に言う ならば、適温相場のシナリオは織り込まれて いますが、リスクは高まり続けており、バリュ エーションには十分な安全余裕度が見られ ません。かかる景気拡大がインフレ率の急 上昇を後押しする可能性は低いでしょう。米 国が減税によるリフレーションのボタンを押し ているとしても、今回の景気拡大局面が記 憶する限り最長であり、すでに利益率が過 去最高水準にあることを踏まえると、米国の 景気が浮揚する保証はありません。中間層 ではなく企業や富裕層に対する減税を手厚 くしたとしても、従来のように財政政策を通じ てリフレーションのボタンを押すような効果は 得られないという指摘もあるでしょう。景気を 浮揚するために欧州で財政政策が全般的 に講じられるかは未知数です。それにはドイ ツの承認が必要であり、政治基盤が弱体化 しているメルケル首相とSPD(社会民主党) との大連立についての協議が予定通り合意 に達する見込みは立っていません。しかし、 欧州一丸となってドイツ主導でリフレーション が実現する可能性は非常に低いとしても、 欧州の財政政策は少なくとも全体として将来 の足かせとはならず、景気は緩やかに拡大 するでしょう。

日本は、債務、人口動態、量的緩和など多く の問題を抱えているものの、自民党が圧倒 的多数の議席を獲得し、同党を率いる安倍 首相が再選したことを踏まえると、欧米のよう な政治的リスクに直面することはないと見て います。さらに、2017年12月に税制改正 大綱が閣議決定され、賃上げや設備投資 に積極的な企業への法人減税が盛り込まれ ました。この制度を最大限活用した場合、 現行およそ30%の法人税率が実質的には 20%程度に低下する可能性があります。日 本企業がついに経営改善に取り組み始めた 証拠が散見されるものの、各企業の判断次 第であり、その数は限定的です。人手不足 による賃金上昇を示すデータが相次いで発 表されている中、日本にはリフレーションを受 けてアップサイドのサプライズがあるかもしれ ません。しかし、日本ではいつものように、リ フレーションを追い風にできる有望な投資先 企業の数は非常に限られています。

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景気後退局面でも増収・ 増益を維持できるクオリ ティの高い企業が、相対的 に最も魅力的な投資先で あると考えています
 

ボトムアップ戦略のストック・ピッカーである 我々にとって、2017年の市場の大幅な上昇 により、景気敏感、マクロ、破壊的変化の脅 威などの潜在的リスクを埋め合わせるのに 十分な価格面での安全余裕度を確保できな いという、我々がここ数年直面している問題 は一段と深刻なものになっています。VIX 指数はほぼ過去最低水準で推移しており、 市場が安全余裕度を主な不安材料と考えて いないことが見て取れます3

このことは、どのポートフォリオでも新たな銘 柄を発掘することがほぼ困難であり、明ら かに大きくミスプライスされているセクターが 存在しないことを意味しています。そのた め、2017年は企業固有の要因が状況を左 右したと言えるでしょう。我々はリスクがアッ プサイドよりもダウンサイドに偏っていると見 ています。世界各国の景気が同時に、か つ持続的に拡大するという幅広い期待が 現実とならなかった場合、足元ではバリュ エーションが高水準で、リスクが軽視されて いることから、元本の保全が重要な課題と なるでしょう。我々は、景気後退局面でも 増収・増益を維持できるクオリティの高い企 業が、絶対リターンの観点からは一見退屈 なようであっても、相対的に最も魅力的な投 資先であると考えています。

 
インターナショナル・エクイティ運用チーム責任者
 
 
マネージング・ディレクター
 
 
エグゼクティブ・ディレクター
 
 
 

1 出所:ファクトセット、2017年12月31日

2 予想や見通しは現在の市場環境に基づいており、将来変更される可能性が あり、また実現することを保証するものではありません

3 出所:シカゴ・オプション取引所ボラティリティ・インデックス、2017年12月31日

 

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